スルガ銀行 Dバンク支店

SURUGA d-labo. Bring your dream to reality. Draw my dream.

特集

特集TOP

2012 Sep.18
Money Goes On
~わたしとおカネの付き合い方〜 Vol.3

執着から離れること、それはお金が与えてくれる「修行」なんです。
ー松本紹圭の「心が清々しくなる、お金との付き合い方」ー

東京大学文学部哲学科を卒業後、お寺という異色の就職先に辿り着いた松本紹圭さん。2003年に手がけた超宗派仏教徒のためのWebサイト「彼岸寺」の立ち上げを皮切りに、お寺の音楽会「誰そ彼(たそがれ)」やお寺カフェ「神谷町オープンテラス」の運営など、お寺を軸にしたコンテンツを次々と世に送り出している仏教界のトップランナーです。そんな松本さんが今年に入って開講したのが、若手の住職向けにお寺の運営を指南する「未来の住職塾」。「宗教」と「経営」という、ともするとタブーと思われてしまいそうなテーマを、いったいどうマッチングさせようとしているのでしょうか?
神を、もとい仏をも恐れぬ(!?)質問に、笑顔で答えてくださいました。

聞き手 スルガ銀行d-laboスタッフ 鈴木大介

執着から離れること、それはお金が与えてくれる「修行」なんです。 ー松本紹圭の「心が清々しくなる、お金との付き合い方」ー

仏教はコンテンツの宝庫

松本紹圭さん インタビューの様子1

d-labo僧侶になられて、今年で10年目を迎えられたそうですね。松本さんはこの節目の年に「未来の住職塾」という、お寺をマネジメントするためのビジネススクールを立ち上げられた。何か期するところはあったのでしょうか。

松本特に10年目だから、ということではなく、気が付けば10年目にアクションを起こしていた、といった感じですね。一般的な言い方をすると「起業した」ということになるのでしょうか。

d-labo一昨年から昨年にかけては、その準備の意味もあってインドでMBAを学んでもこられましたね。もともと一般企業には就職せずに仏門に入ろうと決めた時から、こうした従来の寺院の枠を超えたような活動をしてみたいというお気持ちはあったのですか。

松本もちろん、自分自身を究めていく道としての仏教に興味はあったのですが、それとは別に、現実の消費社会につながるものとしての仏教にも興味がありました。私が大学を卒業した2003年ごろはインターネットのインフラもだいたい整ってきて、「これからはコンテンツだろう」というような話になっていたんですね。それで、「日本でコンテンツが充実しているものは何か?」って考えた時に、出た答えが「仏教」だったんです。そのころ、そんな風に考える人は、まわりに誰もいなかったんですが。

d-laboすごい発想力ですね。たしかに歴史的にも思想的にも、単純なお寺の数にしても、そして周辺の文化まで入れて考えると、仏教はコンテンツの宝庫に感じます。

松本例えば茶道がそうですし、落語もそうですね。コンテンツっていうと新しいものをつくるイメージがありますが、本当に人を引き付けるものをゼロからつくるのは、とても難しいんです。そこで注目されるのが古いもの。仏教には古き良きものが蓄積されているんですが、多くの宝が眠ったままで放置されている。その宝の山に飛び込んで、何か取り出せないものかといろいろやってきたのが、この10年だったように思います。

d-laboコンテンツの代表的なものというと教典が思い浮かびますが。

松本教典は一番コアなものです。仏教の究極は、消費と直接結びつけることはできません。一般の方に興味をもっていただくには、仏像だとか建物だとか、あるいはお寺がもっているコミュニティ=檀家だとか、仏教の周辺コンテンツを切り口に語っていくといいかなと感じています。

銀行とお寺に共通するもの

松本紹圭さん インタビューの様子2

d-labo今のお寺は一般の人にとっては、お葬式、つまりライフステージの最後の段階、というよりも、それが終わった時点で初めて関わるものになっていますね。それを変えていこう、もっと気軽にお寺に来てほしいという想いから始められたのが「未来の住職塾」だと思います。そのカリキュラムを見ると、いわゆるビジネスクールのようですが、実際はどんな授業をされているのでしょうか。

松本使っている単語は基本、マネジメント用語そのままですね。用語そのものは重要ではありませんが、お坊さんがビジネスマンとも共通言語をもって新たなご縁を結べるよう、あえてそうしています。例えば、「あらゆる商品やサービスは、パフォーマンスバリューとプライスバリュー、リレーショナルバリューという3つの価値軸で選ばれる」とか。「じゃあ、お寺のパフォーマンスバリューってなんだろう」と、みんなで考えてディスカッションするわけです。突き詰めていくと、結局は「僧侶が僧侶としての自覚をもって、日々精進していかなければならない」というところに至る。経営的視点で見ているけれど、考えなきゃいけない根本的なことは昔から言われていることと変わらないんですね。

d-labo従来からのお寺の役割を考えると、リレーショナルバリューのもつ意味は大きいでしょうね。

松本リレーショナルバリュー、関係性の価値というのは、一般的なお寺がもっとも強味を出せる場所なんですね。リレーションは積み重ねですから、地元に根付いているお寺ほどバリューをもたせやすい。でもそれも今の段階ではお葬式や法事だけで完結している。もっとライフステージ全般でお寺と人とが関わっていけるようにするにはどうすればいいか、とにかくこれが最大の課題です。

d-laboそういう見方をすると、お寺と銀行って似ているんですよ。銀行も、何かあった時に、事前じゃなく事後に相談されることが多いんです。例えば、「家を買おう」と決めてからローンを組みに来るとか。できればそうではなくて、もっと前の段階から、お客さまのライフプランに合わせて準備していくようなサービスを提供したいと思っているんです。そうすれば、何かあった時に慌てなくて済むはず。そのためにも日常のお付き合いが大事なんです。

松本保険もそうですけど、貯蓄や融資などの銀行が提供している商品は、生活をしていくうえで「安心」につながりますよね。普段から付き合っていれば、万が一の時の「安心」となってくれる。一方で人間には「死」という究極の「万が一」もあるわけです。こればかりは誰も避けられない。その備えというか準備という点で、仏教の果たす役割は大きいと思います。浄土真宗では「安心」と書いて「あんじん」と読みます。この「あんじん」を得るのが浄土真宗の肝心なところなんです。

手放すことで、人の心は自由になる

松本紹圭さん インタビューの様子3

d-labo銀行はお金の不安を解消することを通して「あんしん」を提供する。一方お寺は参拝しに行くことで、「あんじん」が得られる。この2つを回すことで、より「安心」した人生に近づくことができそうですね。

松本そうですね。お金は生活していくうえで、あればあったほうがいいけど、あり過ぎてもその人を縛るものになってしまう。私自身にとっても「お金」というのは大きなテーマの1つでして、学生時代からずっと考えてきたのですが、最近は「お金の本質というのは“手放す”ことにあるのではないか」と思えるようになってきました。将来のために貯めるとか、自分のために使うといった執着の方向ではなく、誰かのために「手放す」、つまり執着から離れる、それこそが「お金」が自分に与えてくれる大きな修行の材料ではないかと。「手放して自由になる」ということですね。

d-laboお布施などは、そこにつながりそうですね。

松本お布施や寄付はいい練習になると思います。大富豪が最後にしたくなるのが「手放す」ことなんです。なぜかというと、人の心は油断すると簡単にお金に縛られてしまうからです。逆に、心の自由を得たければ手放せばいいのではないでしょうか。

d-laboお金が修行の材料になるとは考えたこともありませんでした。お布施はお寺の「プライスバリュー」の1つだと思いますが、経営の視点ではどのように捉えればいいのでしょう。

松本お寺の場合はほかの商売と違って、プライスバリューについての差別化が難しいんですね。お布施にプライスは付けられない。目安というものもない。あくまでもお気持ちとしてお預かりするものですから、お寺にできるのは、お布施がどういうことに使われているのかという説明ぐらいなのです。それを知った人が、ああこのお寺にお布施をしてよかったと思ってくれるような。お布施というのは「喜び」でなくてはいけないんです。大きなお布施をしたらお寺の車が高級車に変わっていたとか、そういうのはイヤですよね(笑)。

d-labo「手放す」ということをキーワードとすると、銀行には何ができるでしょうか。

松本ライフプランニングで顧客と関わっていくなら、お金の貯め方ばかりではなく「付き合い方」や「使い方」を提案していく。もし資産家のお客さまがいるとしたら、無駄な買い物をしてお金をドブに捨てるよりは、価値があると思えるNPOなどに寄付することを勧める。そういう使い方の例を示してみるとか。「一部を手放す」、「おすそわけ」の精神ですね。お金を手放すことで心が清々しくなるような提案をしてみるといいかもしれません。

Information1

「未来の住職塾」

急速に環境が変化する現代社会における、お寺の役割や運営を専門に学ぶ超宗派の僧侶養成プログラム。2012年度は、東京・京都・金沢・広島・札幌・新潟の全国6カ所で開催。都市から過疎地まで、あらゆる規模の寺院を対象に「これからのお寺の100年を切り開く」ための寺院運営力を身に付けることを目的としている。

公式サイト
http://www.higan.net/juku/

Information2

ライフプランシミュレーション

お寺の運営にはリレーショナルバリューが欠かせないとおっしゃっていた松本さん。「安心」を得るための人生の伴走者として、これからは「お寺」に注目する人がますます増えていきそうです。銀行もまた、お客さまの良き伴走者でいたいもの。スルガ銀行の「ライフプランシミュレーション」は、進学・結婚・出産・住宅購入などのライフイベントを具体的に描き、準備を整えようというサービスです。人生をプランニングしてみたい、そんな時はぜひご利用を。

ライフプランシミュレーション

詳しくはこちらから。
/surugabank/kojin/service/lifeplanning/

文 中野渡淳一
撮影 大井成義