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2015 May.11
Topic on Dream ~夢に効く、1分間ニュース~ Vol.78

最高のサービスは顔と名前を覚えること。
伝説のドアマンに聞く「記憶術」

ホテルニューオータニのドアサービス 副支配人の吉川和宏さん

新年度に入り、クライアントの担当者が変わった、新人営業が挨拶回りに来た…など、新たな出会いが増える季節。しかし、「名刺交換をしたのに名前が思い出せない…」「●●さんという名前の人がいたのは覚えているけど顔が出てこない…」そんな経験をして冷や汗をかいたことがある人も少なくないはず。そこで、2,000人以上のお客さまの顔と名前を記憶しているという、ホテルニューオータニのドアサービス 副支配人の吉川和宏さんに、その記憶術の秘訣を聞いてみました。

1日1人でいいから覚える

ホテルニューオータニといえば、ホテル御三家の内の1つに数えられ、多くの財界人や代議士などの要人が利用することでも有名です。ドアマン歴18年の吉川さんが、新人として配属された際に先輩ドアマンから、ホテル内にある会員制クラブに来るお客さまの名前とどんな人となりかを教えられたそうですが、「正直、最初はどの方も同じ顔にしか見えないと思いました(笑)」と当時を振り返ります。そんな中、先輩のドアマンに「1日1人覚えれば、1年で365人覚えられるから、焦らずにゆっくりやっていけよ」と励まされたそうです。

車、名前、会社、顔写真をセットで覚える

お客様の情報を書いたメモ帳

ホテルの会員制クラブには、会社の専用車で来るお客さまが多かったため、名前と会社名に加え、車のナンバーと車種をメモ帳に書いてコツコツ覚えていったそう。その後、さらに記憶力をアップさせるために、それらの情報と顔写真をセットで覚えていったという吉川さん。当時は、新聞や国会便覧、財界誌などを購入しては、顔写真を切り抜いて手帳に貼っていったとか。そのメモ帳を実際に見せてもらうと、1冊に300人ほどの客の情報が手書きで記載されており、現在は全部で7~8冊になるそうです。つまり2,000人以上のお客さまの名前と顔を吉川さんは記憶していることになります。

「私の場合、マメに切り抜いて貼って書き込んでいくという地道な作業の方が覚えやすくて、記憶力につながっているのかなと思います」顔写真などの画像と名前をセットで覚えることで、効率的に記憶できるそうです。

名前を覚えられることで人は幸せになる

プロとして「人並みのことをやっていてはダメなんだ」と思っていたという吉川さん。新人の頃は休み時間も玄関に立って、顔や車種を覚えたり、会社の社長が変われば改めて覚え直す。初めてのお客さまでも、宴会リストなどで事前に名前が分かっていれば調べて予習し、ホテルに到着した際は、「●●様、いらっしゃいませ」と声がけするという徹底ぶりです。

そんな吉川さんの仕事に対する情熱に心を打たれたお客さまも多く、とある代議士は「ほかのホテルでは、名前を呼ばれることなんて一度もなかったのに、ニューオータニのあなただけは名前で呼んでくれるので、すごく嬉しいです」と話し、ある企業の社長は「君はよく人の名前を覚えてくれてるな。君がいるからニューオータニに来るんだぞ」と吉川さんを賞賛します。顔と名前を覚えてもらうことで、誰もが“特別感”を感じるのでしょう。

「そういう言葉をいただけるとドアマン冥利に尽きると感じ、さらに日々精進しようと思います」

人は覚えてもらえると幸せを感じるもの。飲み屋でも服屋でも、店員さんが自分のことを覚えていてくれたら嬉しいですよね。人の顔と名前を覚えるということは、最高の「サービス」なのかもしれません。名前と顔を覚えるのが不得意な方も、相手を幸せにするという気持ちで初対面の人と接してみてはいかがでしょうか。

文・中川謙次