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2015 Jun.12
DREAM MAKER あの人に訊く、この話 Vol.6

集めること1,000冊以上!図鑑コレクターが語る、魅惑の世界
~調べるを超えた、楽しみ方とは?~

『DREAM MAKER』では、人生を楽しみながら夢を叶えた、旬の人にインタビュー。仕事で、プライベートで、その人がこだわりを持っているものや、その人にまつわるストーリー、そしてちょっとディープな話題にも触れていきます。

今回、お話をうかがったのは、博物館の研究員であり、最近では図鑑コレクターとしても知られる斎木健一さんです。
斎木さんが勤めるのは、JR千葉駅から車で約10分、新緑が美しい木々に囲まれた千葉県立中央博物館です。ご自身のデスクにお邪魔すると、ずらりと並ぶ図鑑に囲まれていました。斎木さんは職場だけで1,000冊以上、自宅にも100冊ほどの図鑑をお持ちということです。聞けば、職場の書棚にある図鑑もすべて自費で購入しているとのこと。図鑑コレクター自慢の図鑑やコレクション方法、図鑑の楽しみ方について、たっぶりと教えていただきます。

ご自慢の図鑑と、満面の笑みの斎木さん

古書から最新の図鑑まで、気づけば1,000冊以上

博物館には、展示品だけでなく公開されていない膨大な蔵書があります。そこには貴重な文献や雑誌などとともに、さまざまな分野の図鑑も。博物館員の仕事と図鑑は密接な関係がありそうですが、それにしても個人で購入した図鑑が1,000冊以上とは! 斎木さんがそれほど入れ込んでしまう図鑑の魅力とは、何でしょうか。

「いろいろなジャンルの図鑑がありますが、僕にとっての基本は生き物の図鑑です。子どもと一緒に、あるいは一人で、外を歩いているときに虫や鳥や植物など、いろいろな生物に出会いますよね。そのときに『これは何だろう?』と思ったら、図鑑を見ればわかる。最近であれば、外出先で見つけた物をデジカメやスマホで写真に撮って、家に帰ってから調べることができる。そうやって一つずつ知ることができるのが嬉しいから、図鑑が好きなんだと思います」

斎木さんのデスク周りの書棚には、誰もが一度は手にする学習図鑑をはじめ、古書から最新刊まで、各種の図鑑が並んでいます。

さまざまな年代に渡る図鑑は、どのように集めているのでしょうか?

「新刊の場合は、過去の購入履歴からお知らせが届きます。古い図鑑は、ネットの古書店サイトで結構見つかりますよ。時間があるときには神田・神保町の古書店街を回ることもあります。何ヵ所か決まったお店を回って、最初は見るだけにして、買うのは2回目に回ったとき。あ、でも売れてしまうのが心配なものは1回目で取っておいてもらう(笑)」

ちなみに1巡目ですぐに購入しないのは、より安価なものや状態のいいものを手に入れるためだそうです。とはいえ、膨大なコレクションだけに費用が気になるところです。

「図鑑って、最新の図鑑の方が当然、写真もいいし、書いてある内容も新しいので、古くなると値が下がるんですよ。町中の古書店で100円とか500円で買える図鑑は、見つけたら買うようにしています。地方の古本屋でいい図鑑を見つけると、1万円以上使うこともありますが、それほどお金はかかってないんです」

図鑑購入の総額をうかがうと、「500万円はかかっていない、かな……?」との解答。「コレクションというよりは買い続けていたらこうなった」と言う斎木さんに、ご自慢の図鑑を見せていただくことにしましょう。

1,000冊を超える図鑑がみっちりと入った本棚と斎木さん

図鑑は知識の世界のガイド本

斎木さん自慢の図鑑のなかでも、最近手に入れたというのが、『博物教授法』。明治9年に出版された2冊組です。和綴じの表紙をめくると、動物の線画が一覧表のようにびっしりと並び、そのあとに解説らしき文章が続いています。

「これは、明治時代の小学校などの授業で使われた“掛図(かけず)”を説明するための本です。昔はプロジェクターなどがないので、掛図という大きな図を黒板の前に掛けて、先生が説明したんです。掛図には、動物や植物、乗り物など、さまざまな種類がありました。子ども向けの学習図鑑のような図鑑はどこから来たのかな、と考えたときに近い物がこれではないかと」

右の2冊が『博物教授法』 左は『A FIELD GUIDE TO THE BIRDS』
右の2冊が『博物教授法』。左は『A FIELD GUIDE TO THE BIRDS』。
野外に持ち出すことができる、携帯性に優れた「フィールドガイド」のルーツとなったアメリカの図鑑。

斎木さんが『博物教授法』を購入した時に、博物館内でほかの研究員に「見せびらかした」ところ、ほかの皆さんにも大人気だったそうです。というのも、ここに描かれている動物の名前が、現在とは違う場合があるため。たとえば、カンガルーは「チンクリム」とあり、日本で動物の名前が定着する過程の、貴重な資料なのだとか。同じ本でも、専門分野や興味の対象によって見方が変わるというわけです。

また、『A FIELD GUIDE TO THE BIRDS』も、図鑑の歴史上、重要な1冊。これ以前の図鑑は持ち運びのできない重厚な書物だったため、コンパクトな同書は、画期的だったとか。野外での携帯性に優れた「フィールドガイド」のルーツとなった本なのだと言います。

ほかに、アートとしての完成度が高い、こんな図鑑も。

『鳥ずくし』『魚ずくし』
『鳥ずくし』『魚ずくし』
講談社の「子供知識」というシリーズの絵本。
日本画に添えられた文章は、短歌などではなく生物についての解説なので、図鑑といえる。
著名な日本画家とその一門によって、生物が生き生きと描かれているのが特徴。

「最近、図鑑は旅行ガイドみたいなものだと考えるようになりました。旅行ガイドは、『どこがいいかな』、『どうやって行くのかな』などと旅行前に想像し、旅先でも情報源になる。図鑑は、『こういう風に写真を撮りたいな』とか『こういう生き物がいるんだ』などと眺めるだけでも面白いし、実物を見たときにも役立つ。見るだけで楽しめ、実用性もある点が、図鑑と旅行ガイドって似ている気がして。そう考えると、図鑑の魅力が簡単に伝わると思います」

自宅には3人の息子さんたちと見るために100冊近い図鑑を置いている、という斎木さん。次に、子どもと楽しめる図鑑を紹介していただきましょう。

笑顔で図鑑の説明をする斎木さん

子どもと一緒に楽しむなら、身近な物が探せる図鑑を

実は、幼い頃の斎木さんは、アリさえも怖がる子どもだったとか。それを見たお母さんが「これではいけない、生き物に親しませなくては」と一緒に虫捕りに出かけたり、ときにはヘビを捕まえてくれたこともあったそうです。その結果、すっかり昆虫好きになった斎木少年は、毎月一冊、図鑑や本を買ってもらうことで、生物の世界に親しんでいったと言います。

「子どもと一緒に見るなら、おすすめは『日本の昆虫1400』や『昆虫探検図鑑1600』ですね。植物なら『せんせい!これなあに?』。“黒っぽくてツヤがある”など、ぱっと見た様子から調べることができる。植物の選び方も、家の周りに生えているもの、というところがいい。お母さんと一緒に遊ぶなら、『野草を食べる』かな。僕らも博物館の講座で食べてみましたが、そのときはお浸しにしました。おいしく食べることよりも、味を知ることが目的ですから」

さらに、コレクターならではのユニークな図鑑を見せていただきました。

「図鑑で調べるのは、昆虫より植物の方が難しい。子どもでもチョウとバッタの区別はつくので、すぐに該当するページを探し当てることができますが、植物の場合は同じ仲間を見つけ出すのもひと苦労。見当がつかないと、最初から1ページずつ確かめる羽目になります。そこで考え出されたのが『学習コンピュータ植物図鑑』です」

『学習コンピュータ植物図鑑』

出版されたのは1970年。パソコンもインターネットもない時代に、なんとか植物の特徴で検索できるように考案された図鑑です。葉脈や、葉のつき方などの組み合わせから、乱数表で当てはまったページを引くという検索方法。ただし実際には、植物には個体差があり、季節によって変わることもあるため、なかなか当たらないとか。この図鑑の作者は、ほかにもさまざまな検索図鑑を生み出したそうです。しかし、現在では、インターネットによって植物も検索しやすくなりました。

「実は私も、インターネット上で『野草・雑草検索図鑑』や『樹木検索図鑑』を作っています。自分で自由に作ることができるのは、インターネットのメリットですね」

さて、図鑑についてのお話をうかがってきましたが、ふだんの斎木さんは博物館でどのような仕事をなさっているのでしょうか。あらためて質問してみることにしました。

古今東西、様々な図鑑に囲まれた斎木さん

博物館をもっと楽しく、自然をもっと身近に

斎木さんが勤務している千葉県立中央博物館は、「房総の自然と人間」を常設展示の全体テーマとし、千葉県の自然と歴史について学べる総合博物館です。斎木さんは植物学研究科の職員。植物のほかに、自然史、地学、動物学、歴史学、生態学などの研究員が所属しています。日頃はどのような仕事をなさっているのでしょうか。

「みなさん、何かわからないことがあったときに博物館に尋ねてきますね。生き物に関してなら、『こういうものが獲れたけれど害はありませんか』とか『自然保護活動したいんだけど、どうしたらいいか』とか。果ては『夏休みの自由研究の相談にのってくれませんか』ということも。植物に関する質問がきたときには、私を含め植物の学芸員が5名いるので、それぞれがお話をうかがってアドバイスをしたり。電話がかかってくればそれも応対します。博物館の学芸員は、全員が自分の専門の、または専門に近い分野について質問や相談が来たら受けるんです」

千葉県立中央博物館
千葉県立中央博物館

博物館というと、静かな空間で展示を見るというイメージを持つ人が多いように思いますが……。

「この千葉県立中央博物館の場合は、敷地内に自然が多く、展示もあるけれど外に出れば実物がある。ですから観察会を数多く行なっています。参加者を何十人か連れて、博物館の敷地内で、植物や鳥を見て回るんです。展示だけを見るのではなく、専門家がいるのだからその知識を吸収して欲しいし、博物館としても専門家の知識を表に出していきたいと考えています」

最近の子どもたちは昆虫採集をしなくなっています。集めるといえば昆虫の標本よりも、キャラクターのカード。図鑑の世界でも、キャラクター図鑑に人気が集まっています。一方、昆虫の標本を作るには、身近には昆虫がいないうえ、見つけたとしても昆虫を殺すことになり、時流にあわない部分も。

「もっと自然のなかに入ってもらえると嬉しいですよね。雑草のなかでしゃがんで、蜘蛛の巣が手にひっかかっても気にしないで、目の前に咲く花を美しいと思う……その感覚を持って欲しい。だけど最近は、テレビのなかの美しい花は楽しめるけど、実際の自然のなかに行くとハチやハエが気になって、落ち着いて眺められない人がふえていて。そこを何とかしたいですね。ですから、観察会ではできるだけみんなが楽しめる場所に行くようにして、少しずつ自然に親しんで欲しいと思っているんです」

千葉県立中央博物館では、定期的に観察会を行なっているそうですので、お近くの方は出かけてみてはいかがでしょう。植物だけでなく、鳥や昆虫など、身近な自然を専門家のレクチャー付きで体験できる格好の機会です。詳細は博物館のウェブサイトの「イベント・催事」のところをご覧ください。

もちろん観察会に出かけなくても、図鑑があれば、身近な自然に親しむことが可能です。「植物や昆虫の写真を撮るときには、図鑑と同じような異なるアングルで、何枚も撮ると、あとで調べやすいですよ」と斎木さんからのアドバイス。

さて、これまでにたくさんの図鑑を見て触れてきた斎木さん。最後に夢の図鑑について尋ねてみることにしましょう。

千葉県立中央博物館の庭にて

憧れの図鑑、夢の図鑑を求めて

すでにインターネット上に植物の検索図鑑を公開している斎木さんは、図鑑の作り手でもあります。2014年に千葉県立中央博物館で企画展『図鑑大好き!』を行なった際には、図鑑のプロたちにインタビューをする機会があったそうです。

「図鑑は解説を書く人とカメラマンがペアで制作する場合が多いのですが、やっぱりカメラマンはすごい! 生き物専門のカメラマンの人たちは、泥の中でもどこでも入って行くし、5日でも10日でも泊まり込んで粘る。自然の中で撮るので、風や光、すべてのタイミングが合うまで待つのだそうです」

ご自身でも書籍の図鑑を作りたいのでは? と水を向けると「プロが作った図鑑がよくできているから、人が作ったものを楽しむ方が幸せかな」とのお答え。それでは、これから手に入れたい図鑑、買いたい図鑑はあるのでしょうか。

「現在出版されている図鑑というのは、たとえ高価でもがんばれば手に入れることができるので……やはり欲しいのは昔のものですね。とくに手に入れたいのは、『博物教授法』で解説されている掛図。日本の教育掛図のもとになった、アメリカから輸入された掛図があるんですよ。金沢大学が所蔵している掛図、無理だとわかっていても、あれが欲しいです」

金沢大学の掛図が紹介されているウェブサイトには、鳥、は虫類、魚類、植物をはじめ、あらゆる掛図の所蔵品が紹介されていますので、興味のある方は下記をご覧になってみてください。

『響灘ビオトープの水辺の生きもの』『福岡県の水生昆虫図鑑』

子どもたちにもっと自然に親しんで欲しいと考える斎木さんが、最後に素敵な図鑑を紹介してくださいました。福岡県立北九州高等学校の魚部が著者の『響灘ビオトープの水辺の生きもの』と『福岡県の水生昆虫図鑑』。生徒が自分たちで一生懸命調べて、作り上げた図鑑です。

図鑑を愛することは、自然を愛すること。斎木さんにとって、自然に親しんだ子どもたちが自らで作る図鑑こそ、夢の図鑑なのかもしれません。

Information

斎木健一

1962年、神奈川県生まれ。千葉県立中央博物館植物学研究科・主任上席研究員。専門分野は古植物学・植物学・理科教育。千葉県いすみ市の植物調査では、新種イスミスズカケを報告。「なぜ図鑑で植物の名前を調べるのが難しいのか」についての研究結果を、日本理科教育学会の学術雑誌で発表。2014年7月に企画展「図鑑大好き!」を同博物館にて開催し、図録『図鑑大好き!』を出版。

斎木さん近影
セミナー:スマホ・デジカメで図鑑を楽しむ

「スマホやデジカメで虫や花を撮影し、家に帰ってから図鑑で名前を調べる。」この組み合わせは、自然と親しくなるための最高のツールです。今回はデジカメと図鑑を使いこなすためのコツを伝授いたします。散歩の楽しみも増え、手元には生き物写真集が残ります。写真の知識も生き物の知識も不要ですので、お気軽にお申込み下さい。

開催日:2015年7月26日(日) 11:00~12:3014:00~15:30
講師:斎木健一
会場:d-labo二子玉川
定員:各回24名

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