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2015 Nov.6
Topic on Dream ~夢に効く、1分間ニュース~ Vol.105

「研究者は何を研究してもいいんです」
予防医学研究者石川善樹さんを動かす「問う力」。

石川さんの著書『最後のダイエット』『友達の数で寿命は決まる』

『最後のダイエット』や『友だちの数で寿命はきまる』などユニークな観点で書かれた著書が好評の石川善樹さん。今回は予防医学の研究者として日々活動する石川さんに、そもそも「研究」とは何なのか、それに携わる「研究者」は何を動機としてその研究に取り組むのか、研究にもっとも必要なものとは何かなども含めてお聞きしてみました。

研究者に必要なのは「問う力」

石川さんの研究のテーマは「予防医学」。わかりやすく言うと「健康」が対象です。もちろん健康といっても切り口はさまざま。「研究者は何を研究してもいい」というのが石川さんの考え方です。

「世の中はわからないことだらけです。たとえば、勉強しようと思っているときにお母さんから勉強しなさいと言われるとイラッとしますよね。あれ、何でイラッとするのか全然わかっていないんですよ。そういう意味で研究の対象は無数にあるといっていいと思います」

研究とは、世の中のわかっていないことに「なぜ」という「問い」を立てて、いろいろな知識やアイデアを材料にそれを解き明かすこと。ここでまず研究者に求められるのは「何を研究するか」といった問題です。

「何を研究するかは、結局は自分の興味や関心でしかないんですね。当たり前のことを当たり前と受け流すんじゃなくて、いちいちそれに躓いて不思議に思う。この感性こそが研究者に求められる〈問う力〉です」

研究者には大きく分けると3つのタイプがあるといいます。「問うのが得意な人」と、「組み合わせるのが得意な人」、それと「解くのが得意な人」。研究者になるには「まず自分がどのタイプかを知ること」が必要です。石川さん自身は、もともと「解くのが得意なタイプと思っていた」といいます。それを変えたのが留学先であるハーバード公衆衛生大学院での体験とのこと。

卒業写真

「ハーバードには僕なんかより圧倒的に解ける人たちがいたんですね。そこでこの人たちにはとても勝てないなと思って、問題を作る側にまわったんです。やってみると、研究の起点をつくるというのは、とてもおもしろい。解くのを急ぐのではなく、問いを深めるということが大事だということに気付かせてくれたのがハーバードでした」

そのハーバードでは教授になる際に必ず聞かれる質問があるといいます。

「ハーバードでは、『あなたはこれまでの人類が見過ごしてきたどういうことに気が付いたんですか』と聞かれるんです。ニュートン先生だったらきっと『リンゴが木から落ちることを不思議に思いました』と答えるでしょう。普通のことに躓く力、これこそが〈問う力〉なんですね」

数式と人工知能で「90年後のミッキーマウス」を予測する

石川さんが例に挙げてくれたのはミッキーマウス。90年前にミッキーマウスが登場したとき、その姿は今と比べると顔や目は小さく手足は長いものでした。それが90年の間に、手足は短く顔や目が大きいキャラクターへと変化しました。何に近づいたかといえば「赤ちゃん」。

「僕らは、赤ちゃんの姿が見ていて、いちばんかわいいと感じるんですね。だからミッキーマウスも人々により愛されるように赤ちゃんのような形に近づいていったんです。ただ、そこまでいくのに何で90年もかかったのか。それを考えると不思議ですよね。ここで不思議に感じる、この感性が研究につながるんです」

90年かかって現在の姿へと進化したミッキーマウス。ではこの先の90年後、ミッキーマウスはどんな姿になっているか。「研究者はこういうとき数式を立てます」と石川さん。数式を立てることで見えてくるのは90年後のミッキーマウスの姿。つまり数式というものがあれば未来予測が可能だということです。

「数式というと一般の皆さんには難しそうなものに感じるかもしれませんが、やっていることはシンプル。要は翻訳のようなものです。日本語を数学という言語に翻訳しているだけと考えてもらえればいいです」

「解く」ためには「適切な問いを求める」こと

石川さんが最近始めたのは「ラクロスの研究」。

「たまたまネットのニュースで、就職活動で最強なのはラクロス部だ、という記事を見たんですよ。何でだろうと思ったんです」

体育会系の学生といえば昔から企業が求めてきた人材。その中でもなぜラクロス部の人気が高いのか。調べてみると新しいスポーツであるラクロスには「伝統や歴史に縛られないで学生が自分の頭で考えて努力する」といった特色があるとわかりました。

「昔は言われたことを素直にやる体育会系の学生が求められていたけれど、今の時代は根性が座っているだけではなく、自分の頭で行動する学生が求められているんですね」

「なぜ」という問いのあとは「知識の獲得」。そこで協力してくれたのが同じオフィスをシェアしている元アスリートの為末大さん。

「為末さんは、関連情報を集めて組み合わせたり議論をしたりするのがすごく上手。一緒にああでもないこうでもないと話していると、アイデアができていくんですね。そしていろんなものを組み合わせて、最終的に何が大事かというところに辿り着く。これが研究のステップです。為末さんのような自分と違うタイプの人と組むと研究自体が楽しくなりますね」

むろん、研究の最終目標は「解く」こと。

「美人物理学者として有名なハーバードのリサ・ランドール先生は、僕たちが住んでいる宇宙とは別の宇宙があって、そこには人間と同じような人たちが住んでいるんじゃないか、ということを理論的に証明しました。講演会などを開くと、そんなの俺も思っていたよ、という人がいるんだけど、なんとなく思うことと実際に証明することは全然違う。灰色のところを解くっていうのはとても大変なことです」

その「解」に至るには「適切な問いを求めることがもっとも重要」。なぜならば、「どういう問いを立てるかによって、その後のステップが変わってくるから」です。問われるのは「当り前のことに躓いて不思議に感じる力」。

「研究者というのは皆さんが見ている当り前のことを本当かなと思って研究する人たちです。僕も問う力をどんどん深めていきたいですね」

Information

石川 善樹(いしかわ よしき)

予防医学研究者・医学博士/(株)Campus for H 共同創業者
広島県生まれ。東京大学医学部卒業後、ハーバード大学公衆衛生大学院修了。「人がより良く生きるとは何か」をテーマとして研究し、常に「最新」かつ「最善」の健康情報を提供している。専門分野は、行動科学、計算創造学、ヘルスコミュニケーション、データ解析等。ビジネスパーソン対象の講演や、雑誌、テレビへの出演も多数。NHK「NEWS WEB」第3期ネットナビゲーター。著書に『最後のダイエット』『友だちの数で寿命はきまる』(マガジンハウス)などがある。

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ハーバードの留学体験が研究者として大切なことを気づかせてくれたという石川さん。
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