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2015 Nov.30
コレクターズRoom Vol.12「革鞄」

いつも傍らにあるモノだからこそ、
職人の心が宿った革鞄を選びたい

古山浩一さん

愛するモノに囲まれた暮らしは、豊かさと刺激に溢れているはず。「コレクターズルーム」では毎回、さまざまなコレクターを取材。コレクションする楽しさや自慢の品、収集に必要なお金のやりくり術などをご紹介します。

今回訪れたのは、万年筆絵画の第一人者として知られる、画家の古山浩一さんのアトリエです。熱心な万年筆の愛好家として知られる古山さんですが、万年筆絵画をはじめる以前の36年前から、革鞄も収集。その数、実に200個!自身のことを「コレクターではなく、鞄の研究家」と称する古山さんに、革鞄の持つ魅力から、夢までを伺います。

大切に使い込んだ革鞄には、孤独を癒す力がある

インタビューの様子

古山さんが革鞄に目覚めたのは、20代半ばのこと。美術館巡りで訪れた、イタリアで見た光景がきっかけだといいます。

「1980年頃のローマでは、街にいる人たちみんなが、革鞄を持っていたんです。ジェラート屋、車掌、ビジネスマン…、それぞれの鞄が全部、異なるデザインをしていて。どの鞄も長年使い込まれて、いい飴色になっていました。それを見ながら、こういう文化って日本にはなかったな、革の鞄っていいな…と思って、その旅行中に、革鞄を4つ手に入れたんです。手持ちのお金を、全部つぎ込んで。当時はまだ、革鞄が安かったんですよ。それでも一番高かった鞄は、5万円。20代半ばの僕にとっては、決して安い価格ではなかったですね。どれも、ボロボロになるまで使い込みました」

写真で、古山さんが手にしている大きな鞄は、その後、再びイタリアを訪れた際に購入したもの。スケッチブックがすっぽり収まる大きさで、筆記具や小物類を入れるポケットがついています。

「これを買った当時は、まだ80年代。日本はビニールや人工皮革の鞄ばかりでしたが、イタリアには、いい革鞄がたくさんあったんです。これも画一的なデザインじゃなくて、面白いでしょう?」

その後も、鞄店はもちろん、リサイクルショップ、骨董店など、さまざまな場所で、鞄を求め続けてきた古山さん。実は、革以外の鞄も集めており、合計すると約400点もの品々を持っているとか…!しかし革の鞄には、格別の魅力があるとのこと。

「いい革鞄には、孤独を癒す力があると思いますね。僕はいい革を見ると、うれしくて、ジワーッと体が熱くなる。それを使い込んで馴染んでくると、トロトロの飴色に…。するともう、手放せなくなるんです」

単なる道具を越えた存在となり得る、革鞄。その魅力、古山さんのお気に入りの品々とともに、教えていただきましょう。

■古山’s革鞄コレクション■

仕切りやポケット…。好みは、道具箱のような仕掛けがある鞄

「L&C BOLDRINI(ボルドリーニ)」のバッグ「GHURKA(グルカ)」の鞄

多種多様な革鞄を持つ古山さん。なかでも、古山さんの心を捉えるデザインとは…?ということで、最初に紹介して頂いたのがこれら。は、「革鞄好きの心をくすぐる全てが詰まっている」と古山さんが評価する、「L&C BOLDRINI(ボルドリーニ)」のバッグ。イタリアで1955年に創業したブランドで、日本では滅多に見られない品とか。銀座の鞄店が閉店する際、サンプル品として店頭に並べていたものが放出されており、運良く、それをゲットしたのだそうです。

「タグ、ポケット、鍵…。小さい鞄でも、大きく重厚な鞄と同様、凝った構造をしている。内側にもポケットが充実していて…。こういうのを見つけると、心が打ち震えて、思わず買ってしまう(笑)」と古山さん。

は、「三十数年前に大流行して、当時の男性誌でよく取り上げられていた」という、アメリカの老舗ブランド「GHURKA(グルカ)」の鞄です。当時、正規販売店となっていた百貨店で購入したもので、現在は「まず手に入らない貴重なもの」とか。ポケット豊富なこちらも、「中に仕切りがあったり、ガチャっと開いたりする、道具箱的な鞄が好き」という古山さんの心を捉えたそうです。

万年筆専用鞄は、デンマークの有名職人への特注品

デンマークの職人・ハンスーオースターさんへオーダーメイドで作ってもらった鞄開いた状態

万年筆で絵を描く古山さんは、万年筆も400本ほど所有。万年筆好きが集う「萬年筆くらぶ」の集いに参加している古山さんによれば、実は、万年筆マニアには革鞄好きが多いといいます。「高価な万年筆を手に入れたら、やっぱり革のケースや鞄に入れたい。オーダーでこだわりの鞄を作ってもらっている人も、多いですね」とか。

写真の2点(は開いた状態)は、デンマークの職人・ハンスーオースターさんにスケッチを送り、制作してもらった品です。彼の鞄は、現地でも垂涎の的!ボタンには象牙を使っており、大きい方の鞄で、約25万円。決して安くはありませんが、古山さんは、職人が丹精込めて生み出したモノの魅力を、こう語ります。

「万年筆にはげまされて絵を描く…と、感じることがあります。職人が作ったものには、そういう力が宿っているんです。鞄も、職人が細かい工程まで丁寧に手がけたものは、その背後に人の心があり、生活を豊かにしてくれる。だからこそ、鞄や万年筆には面白さがあるんです」。

「牛が走ってきて、そのまま鞄になったよう」。日本の職人が生んだ鞄

小林哲生さんの鞄小林哲生さんの鞄

収集した革鞄のなかには、日本の職人のものも多数。知る人ぞ知る革鞄職人、小林哲生さんの鞄は、すでに10個以上所有しているそう。小林さんは、某ショップで鞄売り場を担当していたものの、革鞄好きが高じて、独学で鞄作りをはじめたという経緯の持ち主です。それゆえ、用いられているのは、接着剤を使わずに手縫いで仕上げるという、オリジナリティ溢れる手法。手間がかかるため、1年で数個しか作っていないとか!

トップ画像で古山さんが著書とともに手にしているのも、小林さんが生んだ鞄です。形状としては、ショルダー式の鞄をもっともよく使うという古山さんですが、なかでも小林さん作のショルダー鞄は、ヘビーユースしているとのこと。重厚な革の圧倒的な存在感が、お気に入りだといいます。

「いい革は、ぷりんとハリがあって、ただ使っているだけで、ツヤが出てくるんです。最近は軽い鞄が人気のようですが、やっぱり革本来の魅力を楽しめるのは、すいていない厚い革。重さで疲れるのは、仕方ないとあきらめています(笑)」

収集品=構造や進化を知る、貴重な資料。100年前の鞄まで!

ヨーロッパで戦前に使われていたと思われる化粧鞄とコロンとした黒い鞄留め具

古山さんが集めている鞄は、実用性の高いものだけではありません。革張りのトランクは、ヨーロッパで戦前に使われていたと思われる、化粧鞄。中には、瓶など化粧品を固定するバンドがついています。もしも状態が良かったならば、100万円は下らないと思われる品。骨董品店で出会った、博物館級のアイテムなのだそうです。こういったお宝品に出会う秘訣は、こまめに各地の店をのぞくこととか。

また、コロンとした黒い鞄は、デンマークの車掌が、小銭などを入れるために使っていた鞄。同じく100年以上前のものと思われる品です。実際に使うことのない鞄まで集める理由を、古山さんに伺うと…。

「実物を手にしてみなければ、どうして、その作りになっているのかがわからない。たとえば車掌の鞄は、バネの仕掛けられた留め具を引っ掛けると、フタが閉まるつくり。これは、小銭で鞄がふくらんだときでも、留め具が使えるように採用されているわけです。試行錯誤してきたから、この構造に辿りついたんですよね。僕は、自分のことをコレクターとは捉えてなくて(笑)。鞄を、文化人類学的見地から考えたいと思っているんです。学問として考える以上、実物を手にして、事例研究をすることが大切なんです」

夢は、日本の職人技&革鞄で、世界制覇!?

『鞄講談』(自費出版)、『万年筆の達人』『カバンの達人』『鞄が欲しい』(すべてエイ出版)日本の鞄職人が営む店「ル・ボナー」の鞄

革鞄好きの域を越え、文化人類学のひとつとして、鞄に向き合っていると話してくれた古山さん。過去には、『万年筆の達人』『カバンの達人』『鞄が欲しい』(すべてエイ出版)などを執筆しています。3年前には、万年筆愛好家の集いを開催する「萬年筆くらぶ」の仲間と、『鞄講談』なる自費出版本まで。ここまで、革鞄に入れ込む理由は、なんなのでしょうか?

「自分のいる場所をよくするために、なにかしたい…というのが、僕の生き方。日本は、江戸時代に世界最高峰のもの作りをしていたんですよ。鹿革を使った袋ものを生み出す技術は、実に素晴らしかった。でも戦後になって、日本のもの作り力は衰退してしまった。もの作り日本再興の一端を、革鞄が担えるようになったらと願っているんです」

は、そんな古山さんが信頼を置く、日本の鞄職人が営む店「ル・ボナー」の鞄。22万円ほどで購入した、お気に入りとか。

「ほかにも『ORTUS(オルタス)』の小松直幸くんなど、日本の優れた職人たちの技は、本当に素晴らしいんですよ。90年代以降、狂牛病の流行で良質な革の確保が難しくなったり、安価な中国製品が出回るようになって、イタリアもそのほかの国も、革鞄作りは衰退してしまった。そんななか、日本の職人たちは世界でもトップクラス。世界に発信できるブランドを作れば、ハイブランドにだって勝てると思いますね」

■コレクター's データ■
革の鞄
  • コレクション:革鞄
  • コレクション歴:36年
  • コレクション数:約200点
  • 費やした費用:秘密
  • 最高額:40万円/自身の作品と物々交換した品も

Information

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『鞄談義 2』(フェルマー出版)

古山さんと鞄好きの仲間・鞄職人の方々が制作した、鞄にまつわる最新刊。先に紹介した自費出版本『鞄談義』の第二弾となっており、革鞄の魅力から業界の現状・裏側までのぞける、鞄好き必読の1冊。詳細や入手方法は、古山さんの公式ホームページをご参照ください。