特集
2016 Sep.9
Topic on Dream ~夢に効く、1分間ニュース~ Vol.146
文具ソムリエールがレコメンド!
ビジネスパーソンなら1本は持っていたい、万年筆の魅力を探る
いまや文章を書くツールといえばパソコン。でもパソコンやワープロが普及する前は「万年筆」を用いるビジネスパーソンが多くいました。
当時は、入社祝いのギフトとしても選ばれており、ビジネスパーソンの象徴的なアイテムでした。“特別な文房具”それが万年筆なんです。そんな万年筆に憧れを抱きながらも、敷居の高さを感じている人も少なくないでしょう。
今回は文具ソムリエールとして活躍する菅 未里(かん みさと)さんに、改めて万年筆の魅力、そして初心者にオススメの万年筆を教えてもらいました。
“自分オリジナル”に育てる楽しみがある万年筆
高級、上質というイメージを持ちながらも、「手間がかかりそう」「管理が難しそう」というマイナスのイメージも同時に持つ万年筆。菅さんが考える万年筆ならではの魅力とはなんでしょうか。
「他の筆記具とは違い手間がかかる一方で、ペン先が書き癖によって変わるため、『自分だけの筆記具』として育てる悦びがあります。実際に書いてみると、筆記線にインクの濃淡が出るため味わいのある文字になるのも魅力です。またインクのバリエーションが多いため、軸(握る部分)とインクのコーディネートを楽しめます」
ちなみに万年筆用のインクは、黒、ブルーブラック、赤、青、緑、ピンク、紫……と、様々なカラーがあるそう。お気に入りの軸と組み合わせて、カラーボールペン感覚で何本も所有するのも楽しそうですね。
文具ソムリエールが選ぶ、初心者向け万年筆3選!
高価なイメージがある万年筆ですが、金額は様々。値段の違いは、どんなところによるものなのでしょうか。
「ペン先の素材によって異なります。高額な商品は金が入ったペン先『金ペン』が多く、安価なものはステンレスでできたペン先が多い傾向にあります。『金ペン』は書き味が柔らかく、しなるので、万年筆好きはこのタイプを愛用することが多いです。ちなみに金が含まれるペン先でも21K、18K、14Kといったように金の含有量によって価格がかわります」
一方で、ボールペンになれている初心者は筆圧が強いことが多く、硬めのステンレスペン先のほうが、相性がいい場合もあるとのこと。今回は菅さんに、初心者でも扱いやすい万年筆をピックアップしてもらいました。
■パイロット「キャップレス」
1963年に発売された世界初のノック式万年筆「キャップレス」。まるでボールペンのような見た目で、あまり構えることなく手にすることが出来る一品です。
「キャップがないノック式の万年筆です。『キャップを外して使う過程が面倒くさい』という方におすすめです。ボールペンによくあるタイプですので、気軽に使えますね」
■パイロット「コクーン」
20~30代に向けに作られた万年筆ブランド「コクーン」。美しい曲線を描いた軸のデザインは、使いやすさにもこだわっているそうです。
「シンプルなデザインがビジネスシーンでも使いやすく、価格も控えめで試しやすい万年筆です。インクの出がよく癖が少ないペンなので、初心者も抵抗なく使えます」
■プラチナ「3776センチュリー」
商品名の「3776」は、富士山の標高からとったそう。日本最高峰の品質を目指して名づけられた万年筆です。
「筆圧が強い方におすすめしたい硬めのペン先。『メンテナンスが面倒だ、忘れてしまう』という方にも。独自のスリップシール機構より、2年洗浄しなくてもペン先が乾かないようになっています。初心者でもメンテナンスが楽な万年筆です」
文具ソムリエールが、美しさに圧倒された万年筆
様々な文具に精通する菅さん。そんな文房具を愛するプロは、どんな万年筆を愛用しているのでしょうか。
「今年、モンブランから出ている『サンド』という商品を購入しました。購入価格は21万円ほど。見た目の美しさに惹かれ、相当な覚悟で購入しました。特にキャップの美しさには魅了されましたね。このキャップの中には、モンブランの象徴である“ホワイトスター”の形にカッティングされたダイヤが入っているんですよ」
ペン先の素材以外にも、どこかとコラボレーションしたり、この万年筆のようにダイヤが入っていたりする商品も高額になることが多いそうです。
気になるお手入れ&持ち歩き方法は?
せっかく特別な万年筆を手に入れても、お手入れを怠っては万年筆を台無しにしてしまうことに。
「ペン先と首軸の部分をコップの水などにつけおきしたあと、流水で洗い流します。最後に水気を拭き取れば、お手入れ完了です。インクを入れ替えない場合でも、半年に1度は行なってください。インクが乾いたり、ほこりなどのごみが入ったりしてインクがつまる原因となります」
また正しく使ったり持ち運んだりすることも、万年筆を長持ちさせるための大切なポイントです。
「万年筆は強い力を加えるとペン先が曲がってしまうので力を抜いて使ってください。また万年筆は、インクが常にペン先にある状態です。衝撃が加わったり逆さまに持ったりするとキャップ内にインクが飛び散ってしまいますので、持ち運びの際はペン先を上向きにしてください」
キャップの中がインクまみれになってしまったら、綿棒を使って優しく拭き取るといいそうですよ。
手間をかければかけるほど愛着がわく万年筆
使えば使うほど愛着がわいてくる万年筆。ビジネスシーンに連れて歩けば、心強い味方になってくれるかもしれません。
「万年筆は難しいものと思わずに試してみてほしいです。面倒な部分もありますが、手間をかければかけるほど楽しくなり愛着がわくものです。基本の持ち運び方法、洗浄、というルールを守って使ってみてくださいね」
Information
- 菅 未里(かん みさと)
文具ソムリエール®
毎日の生活がちょっと楽しくなる文房具を紹介するウェブサイトmisatokan.jp運営。大学卒業後、文具好きが高じて雑貨店に就職しステーショナリー担当となる。現在は会社員として働く傍ら文具ソムリエールとしてメディアで文房具の紹介、執筆、撮影協力などの活動を行なっている。