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2012 Nov.30
「HONZ」専用本棚設置記念インタビュー!!

「HONZ」ノンフィクション好きが集まる書評サイト

過去3か月以内に発行されたノンフィクション本を厳選して紹介し、世の本マニアから絶大な支持を受けている書評サイト「HONZ」。サイト以外にも月1回の「公開朝会」や、「HONZ夜会デラックス」と題されたイベントなども開催しています。2012年10月には、過去の書評から選び抜いた150冊の書評をまとめた単行本「ノンフィクションはこれを読め!」を刊行。d-laboコミュニケーションスペースでは、これまでにHONZで紹介された約570冊の本を所蔵したHONZ専用コーナーを設置しています。今回はHONZ代表の成毛眞さんをd-laboにお招きし、HONZ設立の経緯やそのユニークな活動についてお話を伺いました。

語り手
成毛 眞(HONZ代表/インスパイア取締役ファウンダー)
聞き手
鈴木 大介(スルガ銀行d-laboスタッフ)
「HONZ」ノンフィクション好きが集まる書評サイト

「HONZ」×「d-labo」

成毛 眞さん インタビューの様子

成毛(HONZの本棚を眺めつつ…)改めてこの本棚を見るとすごいですね。我ながら壮観です。

d-labo初めて見に来られた方は、「こんな本の選び方は普通しないですよ」とびっくりされながら眺めています。カテゴリー別にきちんと分類して並べているところもありますが、あえてジャンルをバラバラに並べている棚もあります。

成毛「新潮選書」とか「生活人新書」といったシリーズものは、揃えて並んでいると綺麗かもしれません。その一方で、少しバラバラ感があった方が面白いことは面白い。一部分は揃っていて、一部分はバラバラという…。

d-laboこのd-laboは、人生を「考える」、「変える」、「楽しむ」ということをコンセプトにした場です。こういう本棚があることで、ここにふらりと立ち寄った方も、人生を考え直したり、いろいろな気づきを得たりできる。そのあたりがd-laboに非常にマッチしています。

成毛いきなり『世界軍歌全集』とか『股間若衆』とか『刑務所なう』といったタイトルを見たら、びっくりするでしょうね。いい意味でのでたらめさ加減が、面白いです。

d-laboHONZは、ネットでの書評が中心ですが、このd-laboというリアルの場を訪れる人もだんだん増えてきました。先日も作家の方が来られて、「私の本はどこにあるの?」と探していらっしゃいました。

成毛そうなのですか。そのうちに、d-laboが、作家の方々が集う場になるかもしれませんね。

個性豊かなHONZのレビュアー

成毛 眞さん インタビューの様子

d-laboHONZは、そもそもどういう経緯で始められたのですか?

成毛本好きでかつ書評が上手い人を集めて、書評家集団を作りたいと、ずっと考えていました。当初は、もっと時間がかかるかなと思っていました。厳選に厳選を重ねて1年に1人のペースでレビュアー(書評家)を集めれば、5年で5人になる、だいたいそれくらいの時間幅を想定していたんです。ところが、最初に集めたレビュアーのほとんどが、優秀な方々だった。それで、当初の予定よりも5年も早くスタートできたわけです。本当に、いい人たちに集まっていただけたと思います。

d-laboレビュアーは、アマチュアの方がほとんどですね。

成毛実は、このプロジェクトの前に、ある大手の出版社から「書評サイトを立ち上げるので、編集長を務めていただけませんか。」というオファーをいただいていたんです。しかし、話を聞いてみると、書き手はプロのライターや作家を起用するということだったので、お断りしました。いまさらプロの作家やライターだけを集めても仕方ないと思ったからです。専門の評論家が書く書評は、それほど面白くないし、文章も意外と上手くない。それに、自分の主張が強すぎて、本をお勧めするという感じではなくなってしまうんです。読者が読みたくなるような文章を書くには、コピーライター的な才能が必要です。それなら、アマチュアで才能のある人を自分で発掘したほうがいいと思ったんです。

d-labo皆さん個性豊かで、面白い方々ばかりですね。

成毛副代表の東えりかさんはプロの書評家ですが、その他は、料理研究家、商社マン、新聞記者、ダンサー兼アーティスト、タレント、分子生物学者など、本当に多様な職業を持ったユニークな方々です。

d-labo皆さんが取りあげる本のジャンルもさまざまで、うまくバラけている印象です。

成毛私は、運がよくないと思ったプロジェクトはすぐやめるようにしています。絶対に失敗しますから…。その点、HONZのプロジェクトは運がよかったですね。いいレビュアーがバッチリ集まって、かつ興味の対象もバラバラ。これだけ運のいいプロジェクトはそうありません。あと5年ぐらいやり続けると、もっと面白くなっていくと思います。中小企業であれ大企業であれ、事業は運に左右される部分がかなり大きいのです。何かやっていると人、物、金が自然に集まってくるとか…。

粋な文化の伝承

成毛 眞さん インタビューの様子

d-laboサイトのファンはどんな方が多いのですか。

成毛男性の比率が圧倒的に高いですね。8割程が男性です。年齢層の中心は、30代~40代ですね。仕事で忙しい人たち、いわゆる働き盛りの男性が主に読んでいます。

d-labo下北沢の「B&B」さんという書店で開催された「朝会」に私も伺ったのですが、朝7時という時間にもかかわらず、20~30人が集まっていて、これはすごいなと…。

成毛そうでしょう。10月には過去の書評から選び抜いた150冊の書評をまとめた単行本「ノンフィクションはこれを読め!」の出版記念イベントを開催しましたが、60人ぐらい集まりましたよ。一番遠くは熊本と札幌から、名古屋からも2人くらい来ていました。来てくれたのは、「本マニア」の皆さんです。単なる本好き、読書好きではなくて、本のマニアなのです。よく鉄道マニアっていますよね。乗り鉄とか、撮り鉄とか…。それと同じです。どんな世界でもマニアがいる世界は大きくなる。特に、今まではノンフィクションのマニアが集まる場がなかったのです。小説好きは、読書会などで意外と集まる。『本の雑誌』といった小説中心の書評誌もあります。しかし、ノンフィクションマニアの集まる場所がほとんどなかったんです。HONZができたことで初めてその場ができたので、日本全国からマニアが集まってきたのだと思います。HONZを中心に、あと何年かするとノンフィクションのすそ野がかなり広がってくると思いますし、それをきっかけに、ノンフィクション全体の売り上げも伸びていくと思います。

d-labo成毛さんご自身、HONZの活動はとても楽しそうにやられていますね。

成毛本マニアにとって、本は娯楽です。本を読むという一種の道楽なのです。あまりディープに本を読み込むというより、本を楽しむ、本を面白がるという姿勢が大事です。HONZが目指しているのも、そういったどちらかというと軽い姿勢なのです。面白いと思ったら、ひたすら面白がる。その面白がるという文化、軽めの文化というのは、結構日本人向きなのです。いわゆる粋(いき)というやつで、日本には江戸の頃からそういう文化が栄えていました。芝居にしろ、すしや天ぷらのような当時のファストフードにしろ、洒落で面白がるのです。私としては、HONZをそのように軽い姿勢でやりたいのです。その意味でも、プロの書評家ではなく、アマチュアの書き手向きのサイトだと言えます。 軽くやって面白がるという文化、多分そちらの方が高尚なのです。明治維新以降、日本人は道を極めるために一生懸命、夢中になって勉強してきました。それを100数十年間延々とやってきたんです。でも、もうそういう時代ではないのかもしれません。もっと軽く、文明や文化を面白がる、ちゃかすとまでは言わないけれども、洒脱に粋に先人の作った文明や文化を使って遊ぶ、そういう人たちがどんどん出てこないとダメですね。そうしないと文化は深くならない。一生懸命だけではダメなのです。クラシック音楽でもそうで、モーツァルトって、めちゃくちゃ洒落のめしていた人なのです。バッハやハイドンといった先人が精緻に作ってきた音楽を、すごくおしゃれに作り変えてしまった。だから、モーツァルトの音楽は、いまだにおしゃれなんです。シリアスなもの、そのアンチテーゼとしてのお洒落なもの、そういうのが交互に出てくる文化の方が優れていると私は思っています。

2割の時間を自分の成長のために

成毛 眞さん インタビューの様子

d-labo最後に、読者の皆さまへメッセージをお願いいたします。

成毛HONZのレビュアーたちは、皆本業の仕事を持っています。11月4日にサイトのリニューアルを行ったのですが、メンバー全員が土日関係なく、死にそうになりながらも協力してくれました。メンバーの一人は、当日は朝5時まで作業をしてくれました。会社だったら部下に全部任しているような仕事でも、HONZでは自分から率先してやってくれているわけです。その方が「家庭は別にして、仕事では8割は会社のために、2割は自分のために時間を使っている。そうすると、すごくクリエイティブになれる。」と言っていました。HONZの他のレビュアーも、皆そういう時間の使い方をしていると思います。最初のうちはただただ大変です。仕事はすごく忙しいのに、HONZの締め切りも守らなければならない。とりあえず本を読んでおかないといけないし、朝会があれば朝7時から参加しなければならない。時間的にも追い詰められていきます。でも、今になって全員が言っています、「2割の時間は会社以外のことをやっている方が絶対いい。生産性が1.5倍ぐらいになるから、結果的にペイするのだ。」、と。生産性が1.5倍になれば、8割の会社の仕事の生産性は、0.8×1.5で1.2倍になります。クリエイティビティの部分も含めて、そういうアウトプットが得られるとしたら、会社としても「2割は別のことをやってください」と言った方がいいのです。皆さんにも、ぜひ仕事とは別の、何かを見つけてほしいですね。それは仕事というより、英語でいう"duty"、「責務」とか「責任」という意味のものです。娯楽のようなものではだめで、やはり何か義務の要素、何月何日まで何かやらなければならないとか、そういうdutyの要素をもった何かである必要があります。それを見つけることを強くお勧めします。そうすると、今まで見えなかったことが見えてくるようになる。たとえ睡眠時間が1時間減っても逆に元気になれる。様々な良いことが起こると思います。

Information1

HONZ

代表者である成毛さんが自らのブログで公募した「本のキュレーター勉強会」を前進に、“読むに値する「おすすめノンフィクション」を紹介するサイト”として2011年7月に開設された。文筆家、才能あふれるビジネスマンや学生、医学部教授、タレントなど総勢20名が所属。小説等の創作を除くすべて―サイエンス、歴史、社会、経済、医学、アートなど、あらゆる分野の著作を対象とする。

ノンフィクションはこれを読め!HONZ

公式サイト
http://honz.jp

Information2

HONZ代表 成毛 眞氏

株式会社アスキーなどを経て、日本マイクロソフト株式会社に入社し、36歳で同社代表取締役社長に就任。2000年には投資コンサルティング会社株式会社インスパイアを設立。現在、インスパイア取締役ファウンダー、スルガ銀行株式会社および株式会社スクウェア・エニックスの社外取締役、早稲田大学ビジネススクール客員教授を務めるなど、幅広く活動中。