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男性や若手が活躍できる現場に

仕事中の森田さん

「介護の現場で大変と感じるのは、時間管理かもしれません。日勤や夜勤など常に違うので、心身のオンとオフをしっかり切り替えるようにしています。また利用者さまの最期をお見送りすることもありますので、仕事にやりがいを感じながらも肉体的・精神的にハードな部分もあります」

 そんなときに励みになるのが「ありがとう」と感謝されること、そして介護士の仕事にやりがいを感じていることと森田さんは話します。

「介護というのは、すべての人にとって大きなテーマです。誰もが生きていくうえで避けられないことでもあります。そこをサポートできるというのは、本当に尊くて素敵な仕事だと感じます」

 利用者さまの個性は十人十色。一人ひとりに合わせてサポートとケアすることが重要になります。就職した2002年頃は介護現場で働く人の多くは女性で、若手よりもベテランが多かったそうですが、近年は大きな変化が見られるそう。

「男性や若手の介護士がとても増えましたね。社会的に仕事に対する男女のボーダーがなくなったこともありますが、ニーズもやはり増えているのだと思います」

 一般的に老人ホーム利用者は女性が多く、現在勤務している特別養護老人ホームに入居されている80名のうち68名が女性だそう。

「介護機器も非常に進化していますが、介護士は力仕事も必要ですので、その点で男性介護士は重宝されます。また男性利用者さまにとっては同性なので話しやすかったり、女性利用者さまも頼ってくださったり可愛がってくださったり、男性介護士だからこそのニーズも多くあると思います」

 利用者さまとの触れ合いは楽しいと笑顔の森田さん。本名以外に「お父さん、お兄さん、○○くん、□ちゃん」など、さまざまな名称で呼ばれているそう。

「その方にとっての自由な名称で呼んでもらっています。家族のように親しくなっていきますが、言葉づかいや態度には充分に気をつけています。そういったコミュニケーションは本当に楽しいし、仕事のモチベーションにもつながります」

介護士の魅力をもっともっと広めたい

インタビューに答える森田さん

 介護の仕事に携わって丸15年が経過。現在感じていることは介護業界の深刻な人材不足といいます。

「今はどこでも人材不足という声が聞こえますが、介護業界はずっと人材不足です。高齢化で施設が増え求職は数多くあるのですが、人材が追いついていない状況です」

 そのような現状でも、森田さんは日々の生活をサポートしながらイベント開催や外出といった利用者さまに喜んでもらう企画も多く実施しています。

「地元とのつながりを大事にして、地域の幼稚園児や小学生との交流をしたり、イベントを開催したりしています。そんなときには、利用者さまの笑顔が本当に輝くんです。見ているこちらまでハッピーな気分になります」

 もっともっと笑顔を増やすために、森田さんは介護士のみならず介護・福祉全体の仕事の魅力を一人でも多くの人に知ってもらいたいと思っていると話します。

「高齢化で社会のニーズは高まりつつも、人材は不足しつづけています。もちろん楽な仕事ではありませんが、暗いイメージを払拭して、誰しもが、とても大切な介護の仕事に興味を持っていただけるような活動も、これからどんどん積極的に行なっていきたいと思っています」

 現場でたくさんの人と触れ合い笑顔を生みだしながら、森田さんはまた新しい目標に向かって歩み始めました。

『社会福祉法人 賛育会』WEBサイト

https://www.san-ikukai.or.jp/

Mini column

進む社会の少子高齢化。介護士が増えても人材不足!?

若者が減少し高齢者が増加する、少子高齢化が社会問題になっています。総人口に占める労働力人口の割合は、2014年の52%から2060年には44%に低下すると算出されています。さらに高齢者1人に対して労働の現役者数が11.2人であった1960年と比較し、現状のままだと2060年には高齢者1人に対して現役者数が1.3人と予測されています。

医療の発達もあり日本では高齢者人口が年々増加し、高齢者がお年寄りを介護する老老介護も社会問題になっています。そんな状況で必要度が高まっているのが、介護士やヘルパーをはじめとした介護福祉のお仕事です。

介護福祉士の登録者数は、平成元年の2,631名から平成28年には1,494,460名に増加。約30年で568倍も増加しています。しかし少子高齢化が進む現在、介護現場は慢性的な人材不足に陥ったままのようです。

厚生労働省が発表した推計によると、団塊世代が後期高齢者となる2025年には介護職員が全国で38万人不足するとのこと。少子化にともなってさまざまな業界で人材不足が叫ばれるなかでも、介護の仕事はこれから特に需要が増し続ける職業といえそうです。手に職をつける選択肢の1つとして、介護士を目指してみてもいいかもしれませんね。