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2014 Aug.30
『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』読者勉強会 Vol.11

『ビッグデータ vs. 行動観察データ』

「グローバル・リーダーを目指す人の総合マネジメント誌」として多くの経営者やコンサルタント、若手のリーダー層から支持を集めている『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』。7月31日にd-laboで開かれた読者勉強会の講師は、ヤフー株式会社チーフストラテジーオフィサーである安宅和人氏。元来はサイエンティストであり、長くマッキンゼー・アンド・カンパニーでマーケティングに携わってきた安宅氏に、最近注目されているビッグデータと行動観察データについてお話しいただいた。

『ビッグデータ vs. 行動観察データ』

2つのデータを使い分けてインサイトを探る

『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』読者勉強会の様子

昨今、ビジネスの世界で顧客インサイトを得るための手法として注目を浴びているビッグデータと行動観察データ。

安宅氏がチーフストラテジーオフィサーを務めるヤフー株式会社のようにネット上でのプレゼンスが非常に大きな企業の場合、定量データであるビッグデータは膨大な量が集まってくる。「秒速で数万アクセス」があり「異状な量のページビュー」から得ることができるデータは確かに有用だが、「マーケティングという視点で考えたとき」は、あくまでも「手段のひとつでしかない」という。

数値では表わしにくい定性データである行動観察データもまた然り。ユーザーのインサイト=本音を知りたければ、基本は「ユーザーを観る」、「ユーザーに聞く」、「ユーザーのつもりで考える」こと。行動観察データは、そこに合致して情報の厚みはあるが、得ることのできるサンプルサイズ(N数)は小さい。

一方でビッグデータは、データの量としては圧倒的だが、そこからは人間の意識情報は見えてこない。2つのデータは「トンカチとまな板くらい違うもの」。ある意味、「一緒くたに議論すること自体無意味」。ただ一方で、うまく使い分ければ情報として大きな価値を持つのもまた事実だ。

「行動観察寄りのインサイトをベースに大きな仮設を立て、方向性を整理したものをビッグデータで効果検証する。デジタルの世界では、これが基本的な流れです」

大切なのは「明解な論点」と「何をするかという目的」

『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』読者勉強会の様子

安宅氏はもともと脳の研究をしていたサイエンティスト。「人間の脳の情報経路のニューロン=神経細胞には役割的に3種類ある」という。

「ひとつは情報が入って来る『入力系』のニューロン。もうひとつはニューロンとニューロンを結ぶ『介在系』のニューロン。そして情報が出て行く『アウトプット系』のニューロンの3つですね」

ここからわかるのは「結局、出て行かないものは情報として入った意味がない」ということだ。どんなデータも「アウトプット」につながって初めて意味を持つ。

「ビッグデータは、データ量が多いため、こねくりまわしていると何かわかってくるんじゃないかという幻想がよくありますが、むしろ逆でデータが大きければ大きいほど溺れてしまいます」

そうならないためには「明解な論点」と最終的に「何をするかという目的」が必要だ。

現代はスマートフォンから得られるセンサーデータだけで「その人が認知症かどうかがわかる」ほどデータ解析が発達している時代。膨大なデータは「必ずやいつかインサイトを生み出す」。が、それは決して「マーケットの構造を理解するようなものではない」。データはあくまでも「何かの断片にしか過ぎない」。それを活用するには「その人なりのリアルな経験が必要」と安宅氏は語る。

「人の言うことを信じない、自分でロジカルに考える頭。そして市場の持つ立体的な感覚や量感を捉える頭脳キャパが大事ですね」

『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』読者勉強会の様子

Information 1

安宅 和人 氏
ヤフー株式会社チーフストラテジーオフィサー

東京大学大学院生物化学専攻にて修士課程修了後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。4年半の勤務後、イェール大学脳神経化学プログラムに入学。2001年春、学位(Ph.D.)取得。ポスドクを経て2001年末、マッキンゼー復帰に伴い帰国。マーケティング研究グループのアジア太平洋地域における中心メンバーの一人として、飲料・小売り・ハイテクなど幅広い分野におけるブランド立て直し、商品・事業開発に関わる。2008年9月ヤフーへ移り、COO室長、事業戦略統括本部長を経て2012年7月より現職。幅広い事業戦略課題の解決、大型提携案件の推進に加え、市場インサイト部門、ヤフービッグデータレポート、ビッグデータ戦略などを担当。著書に『イシューからはじめよ』(英治出版)がある。データサイエンティスト協会理事。応用統計学会理事。

Information 2

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー

世界最古のマネジメント誌として知られる『Harvard Business Review』(HBR)の日本語版。1976年の創刊以来、「優れたリーダー人材に貢献する」というコンセプトのもと「実学」に資する論文を掲載。現在は「グローバル・リーダーを目指す人の総合マネジメント誌」として『HBR』の論文の他日本語版オリジナル記事を掲載。時宜に合った特集内容が好評を博している。

公式サイト
http://www.dhbr.net/