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2013 Feb.20
Money Goes On
~わたしとおカネの付き合い方~ Vol.6

夢を夢で終わらせない。
映画への夢を大きく実らせた
ふるいちやすし監督インタビュー

2012年の第10回ANGEL AWARDモナコ国際映画祭(長編部門)で、最優秀オリジナルストーリー賞、最優秀撮影監督賞、最優秀オリジナル音楽賞、最優秀新人賞(笠原千尋)と四冠に輝いた『彩~aja~』。その作品の監督であり脚本、撮影、音楽、プロデュースをすべて1人でこなした、ふるいちやすし氏。10数年にわたる映画作りへの情熱と夢の実現への道程をお伺いした。

聞き手 長崎 義紹

夢を夢で終わらせない。映画への夢を大きく実らせたふるいちやすし監督インタビュー

現場を感じて音楽を作る

ふるいち氏と筆者が初めて出会った10数年前、彼は音楽家・作曲家として活躍していて、映像とは無縁の印象だった。

ふるいち実は映画音楽が好きで音楽の世界に近づいていったんですよ。ギターリストとしてプロになりスタジオミュージシャンをやり、作曲もするようになったというのが経緯です。

長崎映像制作をはじめようと思ったきっかけは何だったのですか?

ふるいち実際はCMの音楽や、映画の音楽も手がけていたんですが、きっかけは舞台音楽を手がけた時に演出家という存在を認識したことですね。普通、音楽の担当は撮影の現場には行かず、出来上がった映像を見て楽曲を作るというのが一般的なんですが、僕は現場に行っちゃいます(笑)。現場の空気感や役者の息づかいとかを感じながら音楽のイメージを作るというのが好きだったんですね。そうこうしているうちに現場にいると自分でも撮りたくなる。「あ、そこ!そうじゃないんじゃないかな」という気持ちがわいたりして。それともう1つはデジタル化も大きいですね。音楽制作用に買い替えたパソコンに映像編集ソフトが最初から入っていて、「お、これは自分でもできるんじゃないか」と思ったこともきっかけと言えばきっかけです。

ふるいちやすし氏インタビューの様子

そこで、ふるいち氏が考えたのが“東京プチシネ協会”だという。

ふるいちそう、本格的な映画の手前ですね。ショートムービーという短編映画よりもっと自分に近い感覚で名付けました。今から12~13年前ですかね。映画を作りたい、作れるという人たちのデータベース的なものをめざしていました。そのために早々にWebサイトを立ち上げて、作品を募集したりしましたが、なかなか良い質の作品が集まりませんでした。まあ、Webで募集や公開をするというのが早過ぎたんですね(笑)。

長崎そこから今まで、途切れることなく映画作りへの情熱は続いているんですね。

ふるいちまあ、途切れることなくと言いますか、基本的にはすべて自主制作ですから、私の意思の問題でもあります。幸い、映像関係の仕事をいただいたり雑誌で執筆したりと、現場に近いところで仕事を続けられたというのもありますが。ちなみに、雑誌の連載では“東京プチシネ協会”の名称はまだ生きていますよ!

長崎映画作りという夢を諦めずに実践されてきたんですね。そこが大事だったのでしょう。

ふるいち夢を夢のままで終わらせたくないというか、できるんだという気持ち。続ける勇気。そんな感じでしょうか。もちろん意地みたいなものもありますが。夢を実現するために、何ができたらいいか、そのために何から始めるか。自分のアドバンテージは何か。そんなコトすべてを考えながら、ちょっとずつ進んできての今ですね。

ふるいちやすし氏インタビューの様子

資金がないというマイナスをプラスにする

長崎今回の作品についてお伺いしたいのですが

ふるいちこの作品は、ボクのスタイルそのままで作ったものなんです。つまり最小スタッフで密度を上げるというスタイルです。実際、“彩”はキャストを含めて6人で作りました。厳密には映画に出てくる“絵”を描いてくださった画家も含めてなので、現場には3人の役者とボクと助監督の合計5人だけでした。実は、機材も含めてクルマに乗れるのが5人だったという、自主制作ならではの裏話もあるのですけどね(笑)。

長崎たった5人!どうやったらそんなことが可能になるのですか?

ふるいちとにかく徹底的にリハーサルをやる。役になりきってもらってから撮影に向かうんです。そのために、脚本についてみんなでディスカッションをしたり、役へのこだわりを要求する。そこで醸成されたものが映像として残っていくんだと思います。資金が足りないというマイナスをなんとかプラスにする、ボク流の作り方です。その分、役者にも相当負担をかけますが。

ふるいちやすし氏インタビューの様子

長崎スタッフにとっては厳しい監督なのでしょうね。

ふるいち資金の問題で、そうしかできなかったりもします。でも、ボクがお弁当を買いにいったりもするんですよ(笑)。

長崎資金の少なさを逆手に取りつつ、それでも前に進もうという、映画への情熱は監督1人だけではできないものですよね。役者やスタッフ、それぞれが映画への情熱を持ち続けていたからこそ、今回の快挙は成し遂げられたのでしょう。お金だけではない何かがそこにはあるのだ、とお話を聞いて感じました。

ふるいちモナコに行って分かったのですが、むこうには映画を作るということに対してきちんと支援する人たちがいて、それが映像文化を進化させている遠因でもあるんです。日本では興行中心なので、それがなかなか難しい。映画を上映してもらうのにもお金を払わなければならないのです。厳しいですよね、日本の映画製作の現状は。

長崎そんな中で次のステップはお考えですか?

ふるいちちょっと面白い企画があって、モナコで出会ったベルギーの監督と日本を舞台に何か撮ろうというのがあります。もちろん、ヨーロッパからスポンサードのオファーもあるので、ちょっとは贅沢できるかなと考えています(笑)。それはさておき、ボク自身は、“彩”で夢の実現に一歩近づいたという感触がありますが、まだまだステップの途中なので、色々なオファーに応えていきたいですね!

信じて続けること。続けられるためのスキルを身につけること。信じる仲間と共にいること。すべてを一度にかなえることは、とても難しいかもしれません。でも、ふるいち氏と話をしていると、難しいと言うこと自体が言い訳に感じられるくらい、真摯に自分の夢と正面から向き合うことの大切さを、再確認させられました。

ふるいちやすし氏インタビューの様子

Information 1

ふるいちやすし氏
映像作家/音楽家

数々のサウンドトラックやアーティストへの楽曲提供等も行い、自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレイヤー。企業VPやCM等の製作と平行して、年に何本もの自主制作作品を製作している。また、デジタル一眼ムービーのスペシャリストとして、『ビデオSALON』誌(玄光社)等にコラムを連載中。

<作品歴>
短編映画
「彩~aja~」(モナコ国際映画祭2012四冠受賞作)、「サイコロコロリン」(2007スキップシティ国際映画祭入選作品)、「気持ち玉」、「無言歌」
WEBドラマ
「下北ダブル生シュー」
作曲
「UA/紅い花」

<公式BLOG>
ふるいちさんの最新の制作情報、近況はこちらでチェック。
ルーラルアート+ふるいちやすしの日記

文 長崎義紹
写真 長尾真志