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2017 Oct.13
Topic on Dream ~夢に効く、1分間ニュース~ Vol.209

富士山からキャラ絵まで…。
現代の“銭湯ペンキ絵師”の仕事に迫る!

富士山からキャラ絵まで…。現代の“銭湯ペンキ絵師”の仕事に迫る!

昔ながらの銭湯では、おなじみの風景画。そんな“銭湯ペンキ絵”を描く絵師は現在、全国でわずか3人といいます。若手絵師として活躍する田中みずきさんに、ペンキ絵の魅力、そして作品を鑑賞できるおすすめの銭湯などを伺いました。

銭湯ペンキ絵の構図は“三部構成”
視線の先に、富士山がある理由とは?

田中みずきさん

大学時代に銭湯ペンキ絵師に弟子入りし、現在は銭湯をはじめ、さまざまな場所でペンキ絵を描いている田中さん。絵師の仕事は決して身近ではありませんが、最初に興味を持ったきっかけはなんだったのでしょうか?

「大学の卒論で日本美術史を調べるうちに銭湯のペンキ絵に興味が湧いて、絵師の中島盛夫さんの現場を見学させてもらったのがはじまりです。そこで後継者がいないと聞き、『それなら私がやってみよう!』と思い立ったんです」

田中さんは中島さんのもと、独立するまで8年間修業したとのこと。ペンキ絵ならではの技法とは…?

「遠景に富士山、中景に小さな山々、近景に水辺や小島という“三部構成”が基本。湯船から絵を眺めると、まず近景が目に入ってきます。そこから目線を上げていくと、富士山に行き着くように描くんです」

田中さんによれば、富士山と水辺の景色は二大モチーフで、合わせて描かれたものも多数。とくに富士山は必ずと言っていいほど銭湯のペンキ絵に描かれていますが、そこにはこんな背景があるそうです。

「江戸後期から明治・大正にかけて、富士山は庶民の信仰や憧れの対象でした。各地の神社に富士塚がつくられたり、錦絵に描かれたりしています。銭湯で風景画が描かれるようになったのは大正時代と言われていますが、探せばもっと古いものも見つかるかもしれません。そんななか富士山の絵は、お客さんに大変喜ばれたのではないかと思います」

お次は、田中さんの描いた銭湯ペンキ絵の数々を、訪ねてみましょう。

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銭湯ペンキ絵を堪能できる
東京銭湯めぐり

■心までも洗い流す“富士山ブルー”を眺める銭湯

心までも洗い流す“富士山ブルー”を眺める銭湯

爽やかな青が壁一面を彩る「第四富士の湯」(葛飾区宝町2-11-8)は、寺社のような宮型造りの昔ながらの銭湯です。

「天井付近のカーブを生かし、富士山が映える構図を考えました。横長の画面いっぱいに浜辺の風景を描いて、海と空の開放感を感じさせる絵に仕上げています」

青は、銭湯の風景画の中でも大切な色。心洗われるような爽やかな色調が、田中さんのペンキ絵の魅力でもあります。

■銭湯生まれのゆるキャラ「お湯の富士」と会える湯

銭湯生まれのゆるキャラ「お湯の富士」と会える湯

「第二寿湯」(江戸川区江戸川1-46-12)のペンキ絵は、雲が近景という珍しい構図。右端のキャラクターは、常連客の間では知らぬ人はいない(!?)名物キャラクターとか。

「昔、常連客にお相撲さんが多かったことから、ご主人の発案で生まれた『お湯の富士』くんです。立体感をつけて活き活きと描いています」

江戸川区浴場組合のマスコットキャラクターにも就任した、「お湯の富士」くん。ゆるキャラサミットに参戦するなど、最近の銭湯人気に一役買っているそうです。

■山好きにはたまらない!銭湯で世界の名峰鑑賞

山好きにはたまらない!銭湯で世界の名峰鑑賞

大手町と神田の間にある「稲荷湯」(千代田区内神田1-7-3)は、ビジネスマンにも人気の場所。富士山の両脇にそびえるのは、なんと、アルプス山脈(左)とロッキー山脈(右)!

「常連客にスイス人の方がおり、『稲荷湯』のご主人の自宅にもカナダ人の学生がホームステイしていることから、それぞれの国の山を描きました。ペンキ絵はご主人の趣味や思いが反映されることも多く、ペットや趣味のアイテム、地元の名物などを依頼されることも」

ペンキ絵は、通常2、3年で塗り替えの時期がやってきます。浴場の景色が一新されるのは、常連客の銭湯通いの楽しみのひとつとなっているそうです。

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銭湯から飛び出して
意外なコラボレーションも!

全国の銭湯でペンキ絵を描く田中さんですが、最近では企業とコラボしたりイベントで披露したりと、銭湯以外にも活躍の場を広げています。

■“銭湯と高級車”という、異色コラボ実現!

“銭湯と高級車”という、異色コラボ実現!

「2015年のAudi Japanの広告プロジェクトとして、『第二日の出湯』(大田区西蒲田6-5-17)に、期間限定で描かせていただきました。ペンキ絵と広告は、昔からある取り合わせ。かつてはペンキ絵の端に地元のお店の広告がずらりと並んで、絵師が広告会社に所属していた時代もあったそうです」

期間中は、ケロリン桶ならぬ“Audi桶”も用意する徹底ぶり。日本の伝統文化と高級車という、粋な遊び心を感じさせる試みとなりました。

■ほろ酔いで、“いい湯気分”に浸れる居酒屋

ほろ酔いで、“いい湯気分”に浸れる居酒屋

大阪の炉端焼き居酒屋「乃ノ家本店」(大阪市大正区三軒家西1-4-15)のお座敷を飾るペンキ絵は、一見すると、舞台の背景に使う書き割りのよう。

「お店の準備中に描かせていただきました。昭和レトロな店内に、銭湯ペンキ絵が思った以上にマッチしています」

お酒と美味しい料理でほろ酔い気分を楽しみながら、銭湯風の絶景を楽しむのも一興です。

■開運パワー絶大!赤富士の幻想的風景

開運パワー絶大!赤富士の幻想的風景

東京キモノショー2017」で、入口に飾られたペンキ絵。朱に染まった赤富士が、幻想的なムードを生み出しています。

「絵を背景に記念撮影ができるように、踏み台(写真左下)を設置してくださいました。着物姿でたくさんの方にお写真を撮っていただけたようです」

赤富士は縁起が良く、開運パワー絶大とされているとのこと。銭湯のペンキ絵でも描くことがあるそうです。

■近世の風俗をヒントに、ペンキ絵アート誕生

近世の風俗をヒントに、ペンキ絵アート誕生

田中さんのご主人である駒村佳和氏との合作で、「越後妻有アートトリエンナーレ2015《今日の限界芸術百選展》」に出展した作品です。

「江戸時代の絵巻で見つけた、お姫さまが風景画の屏風に囲まれて湯船に入っている絵に着想を得ています。3メートル近くある大屏風なので、山型の階段を立てて、そこを登り降りしながら絵を眺められるようにしました」

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田中みずきさん

このように、庶民生活を彩った銭湯ペンキ絵は、田中さんの手によってアートとしての可能性も広げています。最近では、海外メディアから取材を受けることも多いそう。

「海外の方から見ると、銭湯はお寺のような和風の建築物。なかには脱衣所と浴場があって、その先には富士山の絵がある。そして見知らぬ人とお風呂に入る…という文化は、カルチャーショックのようですね。もっと多くの方に銭湯に親しんでもらいたいです。今後は、銭湯の絵を子どもたちと一緒に描く活動にも力を入れていけたらと思っています」

Information

田中みずき

公式ブログ:「銭湯ペンキ絵師見習い日記」

1983年大阪府生まれの東京都文京区育ち。明治学院大学で美術史を専攻。大学院在学中の2004年に銭湯ペンキ絵師の中島盛夫氏に弟子入りし、2013年に独立。現在は、ご主人の「便利屋こまむら」こと駒村佳和氏とともに銭湯ペンキ絵を制作し、銭湯の魅力を伝える活動にも力を入れている。

TVCMにも登場中!

田中さんの制作風景がTVCMで放映!

2017年10月より放映の「日本のひととき」をテーマにしたJTのCMシリーズ「銭湯篇」に、銭湯ペンキ絵を描く田中さんの制作風景が登場。CM放映を記念して「小杉湯」(杉並区高円寺北3-32-2)では、CMに登場する田中さんのオリジナル銭湯絵やJTギャラリー、果実湯を楽しめる「至福のひととき湯」を開催(2017年10月10~15日)。