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2020 Jul.3
SURUGA Cycle Journal Vol.55

平塚発 世界が欲しがるサイクルキャップ
Cyclone 伊達 千鶴 氏

平塚発 世界が欲しがるサイクルキャップ Cyclone 伊達 千鶴 氏

神奈川県平塚市の、駅からすこし離れた郊外に位置するお店「Cyclone サイクロン」。ここは知る人ぞ知る、オリジナルサイクルキャップの工房だ。
サイクルキャップはヘルメットの下に被るもので、日よけや汗止めなどの役割を担っており、ロードバイクに乗る人にとっては非常にポピュラーなアイテムのひとつである。

サイクリングプロジェクトで連載中の共同シティプロモーション企画「ひらつかLaLaぽた」をきっかけにご縁が生まれ、今回取材する機会をいただいた。なお、現在「ひらつかLaLaぽた」への出演交渉中でもある。

工房を訪ねてみると、そこは住宅街の一角で、周辺の雰囲気に「溶け込んだ」というよりは「馴染んでいる」という言葉がとてもよく似合う店構えだった。中から1人の女性が出てきた。店主の伊達 千鶴さんだ。

伊達さんの第一印象は「親しみのある豪快な姉さん」。日焼けした肌に屈託のない笑顔、笑うときれいに下がる目尻、そして明るく元気な笑い声と話し方。また、さり気ない気配りもあって、この方は周りの人を元気にさせてくれるんだろうなと、そんな風に感じた。

「場所、分かりにくかったでしょう。お客さんの中にもいるんですよ、見るからに自転車乗りの格好して店の前でキョロキョロうちを探してたりする人が!」そう言って笑いながら、伊達さんは店内へ招き入れてくれた。

宝箱のなかへ

木目調で統一された店内には一本の梁が渡っていて、真っ白に塗られた壁とミントグリーンの天井が清涼感と明るさを醸し出し、さらには梁の存在を際立たせていた。木製家具の配置もそれぞれが主張し過ぎる事なくすっきりと収まっている。

内装について伺うと、知り合いに自転車乗りの大工さんがいて、どうしてもその方にお願いしたかったという。

「小田原にある自転車屋さんの内装を手がけた方なんですけど、その内装がすごく好きで。同じように作ってとお願いしました」

「あとは、自転車を飾りたいとか、入り口の一部に目隠し付けてとか、そんなざっくりとした要望を伝えただけなのですが、さすがプロですね。想像以上の仕上がりでした」
壁の棚は、じつは自転車のディスプレイ台にもなっている。それぞれの棚に高低差を付けることで展示自転車に躍動感が出る演出も、自転車にも乗る大工ならではである。いま流行りのDIYという選択肢もあったが、「プロのセンスにお任せしたい」というのが伊達さんの強いこだわりのようだ。


作業場(奥)と本物の宝箱(手前)

なぜこの場所に出店したのかも聞いてみた。もともとお母さまがこの場所で商売をされていて、隠居を機にそのまま譲り受けただけというが、生まれも育ちも平塚の伊達さんにとってはこの場所以外考えられなかったようだ。

工房は店舗も兼ねているため、作品だけでなく材料や作業スペースなどすべてが同じ空間に存在するわけだが、作品、材料、道具に対する伊達さんの愛情がおしゃれにディスプレイされていた。お気に入りの生地や糸にミシン、作品たち、自転車をモチーフにした小物、洗練されたデザインのオブジェ、そして壁に掛けられた愛車2台。すべてバランス良く部屋に散りばめられていて、センスを感じる。ちなみに、飾ってある小物やオブジェのほとんどは友人たちからの開店祝いの品や贈り物。どれも凝ったオリジナル作品ばかりで、店主の人柄が如実に伝わってくる。伊達さんの大切なもの、お気に入りがぎゅっと詰まったこの場所は、まるで伊達さんの宝箱の中にも見えてきた。


ミシン糸

お店のロゴが入ったペダル

棚に並ぶ作品たち

ギフト:鏡の装飾は自転車のスプロケットをバラしたもの

ギフト:置時計
ギフト:革製の貯金箱

ギフト:「31-96」= Cyclone

ギフト:ディスクブレーキのローターを文字盤にした、繊細なデザインの掛時計

ロゴ入りギフトはこんな所にも

これもギフト
ダウンヒルの末政選手のサイン

運命の出逢い

伊達さんと自転車の出逢いは、今から16年前に遡る。当時働いていた職場の上司からMTB(マウンテンバイク)を譲り受け、乗るようになったのが始まりだった。はじめてのサイクリングでは自宅からほど近い江ノ島までの往復を楽しんだ伊達さんだが、2回目にはなんと長野県にある富士見パノラマリゾートまで足を延ばす事に。「今思えば」と笑いながら当時を振り返るが、そこで自転車で自然の中を走る事の楽しさを知り、以来どっぷりハマったそう。

自転車の楽しみ方や魅力というのは車種によって異なってくる。幼少期から外で遊ぶのが大好きで、高校では山岳部に入り今でもキャンプや登山をするほど自然が大好きな伊達さんにとって、グラベルロードや山の中を走るMTBに魅せられたのは必然だったのだろう。
そして、自転車屋さんに通うようになると自転車仲間ができ、サイクリングする機会が増えて周りの人の影響で自然にロードバイクにも乗るようになった。

「自転車が好きな人たちって、何台も何種類も自転車を持っているコレクター気質の方も多いんですよね」そう言いながらも、伊達さん自身もかなりの収集癖があり最高10台まで所有していた時期もあったそう。店のオープンが決まってからは、スペースの都合で愛車を絞らなければならなかったが、それでも現在6台だ。イベント出店などの仕事用といった使い分けもあるが、やはりコレクターといえるだろう。愛車たちも紹介してくれた。


MTB(O-TAKE)

ロードバイク(GIANT)

グラベルロード(SURLY)

工房にはMTBとロードバイクがディスプレイされており、小径自転車は別室に置いてある。新入りのグラベルロードは特別に持ってきてもらった。自宅には、解体(バラ)してあるがシクロクロスバイクとクロモリのロードバイクも持っている。
「シクロクロスも経験が…?」と驚くと、
「いやぁ、レースはもう二度とやらないです〜」と笑いながら即答された。

こんなにも自転車にハマったのは、周辺の環境も大いに関係していると話す。伊達さんの暮らす神奈川県平塚市は、市内の大部分が平野のため平坦な道が多く、自転車を始めるにはちょうどいい場所だ。さらに、すぐ近くには江ノ島があり、ちょっと足を延ばせば三浦半島にも気軽に行けるし、坂道を上りたくなったら丹沢・箱根方面へ。といったアクセスの良さもあって、近場でさまざまなコースが楽しめる。もともと地元愛の深い伊達さんにとっても、自転車というフィルターを通して見る地元の風景は魅力再発見の連続だった。

愛すべき作品たち

Cycloneで展開する作品は、すべて伊達さん自身が「欲しい!」「こうなったら使いやすいのに」と思ったものが具現化されている。例えばハンドルに装着するバッグ「ハンドル袋」は、ライド先で見つけた美味しいパンを、型崩れすることなく持ち帰って家でも味わいたいという想いから生まれた。パン3個まで入れられるのがポイントだ。肩にかけて使用するサコッシュも、自転車に乗っているとどうしても走行中に前に下がってきてしまう煩わしさを解消するため「サコッシュストラップ」を開発して後ろで固定できるようにした。


サコッシュストラップ(上)とハンドル袋(下)

そして看板商品の「サイクルキャップ」。これが一番こだわった作品であり、Cyclone設立のきっかけでもある。


サイクルキャップ

今でこそいろんなタイプの自転車に乗っている伊達さんだが、当初サイクルキャップには、まるで関心がなかったという。そもそもMTB乗りでサイクルキャップを被っている人はほとんどいないし、必要性もいまいち分からなかったそう。だがロードバイクにも乗るようになると必要性が理解できるようになったと同時に、今度は不満が出てきた。「サイズが合わないし、なぜ可愛いデザインがないのか」と。既製品のキャップでは外国人仕様でサイズが合わないこともままある。ジャストフィットするキャップが無いのなら自分で作ってしまおうと作り始めたのがきっかけで、周りの友人たちにも作ってプレゼントするようになり、気づいたら勤めていた会社も辞めて独立するほどのめり込んでいた。

そして極め続けたキャップ作り。ひとつ問題をクリアすると、今度は次の問題をクリアしたくなるのが伊達さん。「可愛い柄のを被りたい」「手洗いしかできないのは面倒!洗濯機でも洗えるようにしたい」「汗の吸水性をもっと良くしたい」「ツバのバランスは…」などアイディアがどんどん湧いてくる。何度も試行錯誤し現在のサイクルキャップが完成した。「自分が好きなものを作りたい」というポリシーが彼女の創作意欲をかき立てているのだろう。


こだわりの自慢のキャップたち

今は時節柄、「マスク」の売れ行きも好調だ。麻製のマスクは通気性も良く、キャップ同様、サイクリストたちから称賛の声が多く聞こえてくる。


マスク

Tシャツ

作品棚の中に他とは随分違ったテイストの柄を見つけた。
「ドクロ柄ですね(笑)。生地は基本自分の好きな柄や素材しか選ばないんですけど、たまにこんなのあったら面白いなと感じる生地もあって。それがこのドクロなんです。あとマッチョ柄もありますよ」

伊達さんの生地選びの基準は、「自分が好きかどうか」の一択。お客さまから「〇〇柄があったらいいな」とリクエストがあり、たとえ該当する柄を見つけてもそれが自分の好みでなければ応えることはしないと断言するほど、はっきりしている。

「私は私の好きなものしか選ばないし、私自身が気に入らなかったら作らないです。それは、自分の作ったものすべてを愛したいから。商品というよりも『子ども』なんですよね。たとえ私が死んだ後もこの子たちが残ればそれでいいなと思っています」

伊達さんが愛情をいっぱいに注ぎ込んだ子ども(作品)たちの使い心地は購入者の心を鷲掴みにし、確実に広まっている。通信販売をメインに展開しているがその勢いは日本に留まらず海外からも注文が入るほどだ。だがこれまで一度も人を雇ったことは無いという。人手は増やさないのですかと率直な疑問を投げかけると、ちょっと意外な答えが返ってきた。

「全部自分で完成させたいんですよね。だって責任を持てなくなるじゃないですか」

量と質のコントロールというのは非常に難しい。増員して生産量を増やすと、自分の目が行き届かなくなり質が下がるリスクが高くなるからだ。前述したように、伊達さんにとってすべての作品が子どもである。一つひとつ、すべてに自信を持って世に送り出したいという考えは、仕事に対する誇りと責任感の塊なのかもしれない。

普段の制作ペースはあまり無理をしない程度に進めるが、イベント出店時には大量に用意して臨んでいるそう。イベントで捌けるからなのかと思いきや、これもお客さまのため。展示数があればあるほどじっくりと見る人が増え、反応が格段に良くなるのだそう。だからこそ、例えば販売目標10個に対して20個用意するのではなく、40個でも50個でもとにかくたくさん用意するようにしている。お客さまが手に取ってから購入するまでの時間はたしかにかかるが、何度も迷って選んだお客さまの満足気な顔が見られるのは何ものにも代えがたい。また、顔の見えない通信販売にもかかわらず購入者からわざわざ感想やお礼のメールをいただいたりするのも店を続けていくうえでのモチベーションにつながっているようだ。

SNSでつぶやいたり、作品を作っては配送したり、お店を開けたり、と忙しい毎日を送る伊達さんだが、そんな日々の中でも一番大事にしている事がある。それは「走る」時間だ。忙しくても自転車に乗る時間はできるだけ欠かさないよう心掛けている。その理由は、説得力がなくなるから。

「自転車乗りが作るサイクルキャップってうたってるけど、全然走ってないじゃん」そう思われてしまったら自分の作品や言葉に説得力がなくなってしまう。自転車に乗って楽しんでいる姿を見せる事が何よりもプロモーションになるのだ。そしていかに共感してもらえるかを大切にしながら乗っている姿をSNSに投稿している。投稿した日の反応は普段の投稿に比べて全然違うようだ。

そんな伊達さんの今の夢は、「五大陸制覇」。
実は少し前までの夢は「全国制覇」だったが、全都道府県から注文が来るようになり見事その夢を叶えた。さらに海外からの注文も入っている今となっては、五大陸制覇の夢が叶うのもそう遠くはないだろう。今後の伊達さんにもCycloneにも目が離せない。

Information 1

Cyclone

https://cyclone.saleshop.jp/

Information 2

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