増税前だからと焦らずに! 住宅購入と消費税をおさらい
写真:iStock / thinkstock
消費税率は2017年4月1日から10%にアップされる予定だ(再延期の話も出ているがまだ決定はしていない)。しかし、注文住宅などは今年9月末までに「請負契約」を結べば経過措置の特例によって2017年4月以降の引き渡しでも消費税率8%が適用される。そもそも何に消費税がかかるのか、購入する住宅の種類ごとにいつまでに何をする必要があるのかおさらいしてみよう。

2016年9月末までに「請負契約」ができれば消費税率は8%

住宅の取得に対する消費税は、原則として引き渡し日の税率が「建物」に課税される(土地は消費税非課税)。しかし、5%から8%にアップしたときと同様、今回も経過措置と特例が定められており、税率引き上げの半年前(2016年9月30日)までに締結した請負契約などについては、2017年4月1日以降の引き渡しでも税率は8%の適用となる。そこで、住宅の種別ごとに、消費税8%で購入できるタイミングを整理しておこう。

●注文住宅、リフォームの場合
建築会社と「工事請負契約」を結ぶ注文住宅の場合、2017年3月31日までに建物が完成して引き渡しになれば、消費税がアップする前なので消費税率は8%が適用される。しかし、引き渡し日が2017年4月1日以降になった場合でも、経過措置により工事請負契約が2016年の9月30日よりも前に結ばれていたなら、消費税率は8%のままだ。
しかし、注文住宅の場合、土地探しや建築会社とのプランニングに時間がかかり、請負契約を結ぶまでには数カ月かかるのが一般的。経過措置が受けられる2016年9月30日ぎりぎりに焦って請負契約を結ぶより、早めに家づくりをスタートさせてじっくり時間をかけて検討したい。

リフォームの場合も、工事請負契約を結ぶ場合、2017年3月31日までにリフォーム工事が完了して引き渡しになれば、消費税率は8%が適用される。注文住宅の場合と同様に、経過措置により請負契約が2016年9月30日までに完了している場合も8%が適用される。ほとんど建て替えに近いような大規模なリフォーム工事でない限り、契約から引き渡しまで半年以上かかるケースは稀だが、消費税アップ直前には駆け込みによるリフォーム工事が増えて、順番待ちになる可能性もある。2017年3月末までにリフォームを完了させるには、早めにリフォーム会社に相談しておくのが安心だ。

【画像1】住宅の契約・引き渡し時期と消費税率(筆者作成)

【画像1】住宅の契約・引き渡し時期と消費税率(筆者作成)

●新築一戸建て・新築マンションの場合
新築一戸建て、新築マンションを購入する際の販売会社との契約は「売買契約」。そのため、原則引き渡し日の税率が適用になる。つまり、2016年9月30日までに契約をしても、引き渡しが2017年4月1日以降であれば税率は10%だ。ただし、未完成物件の売買契約の場合、壁の色やドアの形状などについて特別の注文が付けられる場合は、請負契約と同様に経過措置が適用される。つまり、間取りや仕様の変更ができる物件なら2016年9月30日までに契約すれば、引き渡しが2017年4月1日を過ぎても税率は8%だ。

●中古一戸建て・中古マンションの場合
中古住宅で、売主が個人の場合、個人間売買は消費税の課税対象外のため、消費税がアップしても購入価格には影響はないといっていいだろう。しかし、売主が不動産会社など法人の場合は消費税率アップが影響する。この場合、新築マンション、新築一戸建てと同様の売買契約なので引き渡し日の税率が適用される。

住宅の取得で、消費税がかかるものは?

住宅の場合、消費税の課税対象になるのは建物分だけ。土地代には課税されない。そのため、一般的には土地の持分の割合が低い分譲マンションのほうが消費税増税の影響を受けやすくなる。

また、住宅を取得する際には、購入価格や建築費用以外のさまざまな費用のなかにも消費税がかかるものがある。消費税の対象になるのは、住宅の建物価格のほか、ローンを利用する際の事務手数料、中古住宅や土地を購入する際の仲介手数料、家具・家電の購入費用、引越し代、リフォーム工事費だ。仲介手数料やリフォーム工事費など人によって不要なもの、家具・家電など購入金額に差の大きなものがあるため、消費税が8%から10%に上がる影響の大きさはケースバイケースだ。
例えば、家具・家電の購入費用が100万円だとすると増額は2万円。2500万円の中古住宅の購入で仲介手数料(物件価額×3%+6万円)が81万円だとすると増額は1万6200円。このように、課税されるものが多いほど、総費用は大きくなっていく。

増税後のほうが買いという意見も

では、消費税が10%になる前に住宅を購入、建築したほうがトクになるのだろうか。SUUMO編集長の池本洋一さんに話を聞いた。

「事業者にきくと、増税後のほうが実は買いだという意見も少なくありません。新築一戸建てや新築マンションは、増税前は売りやすいため価格は強気につけますが、増税後は冷え込みが予想されるため弱気になりやすい。増税前後の販売計画を練る際には、増税前物件に利益を載せて、増税後は薄利設定にするケースもあると聞きます。また増税前に大量に建てた結果、売れ残る場合もあるでしょう。一概には言えませんが増税前にはなかった値引きが期待できるケースもあるのです」

では、2016年10月以降に工事請負契約を結んだ注文住宅などの場合はどうだろう。
「消費税は原則として引き渡し時点の適用になります。よって事業者としてはなるべく増税前の引き渡しをめざして工事します。工事の発注形態にもよりますが、需給バランスから工事費は増税前のほうが強気に設定されやすくなります。また駆け込みで工事が殺到して工事が粗くなるのではないかという懸念を持つ方がいらっしゃいますが、今はある程度建築の検査体制がしっかりしているのでその点はそこまで心配しなくていいでしょう」

以上のことを考えると、何が何でも増税前に買わなくてはと、焦らなくてもよさそう。住宅取得で大切なのは自分にとっての買い時。焦って購入して後悔した……とならないよう、結婚、出産、進学または子どもが卒業したなど自分にとってのベストタイミングで住宅購入を検討してほしい。